大野力

PEOPLEText: Mariko Takei

今回「ROLLS」では、帯状のアルミを使用されるそうですが、その素材を選んだ理由を教えて下さい。

硬いということと、柔らかいということを行き来したいと考えていました。重ねた時には什器として利用できる程に硬く、1枚のときには建築要素として成り立たない程に柔らかい。そして、その2つの状態がシームレスに連続するというイメージです。あと、1枚のときに自重に対してある程度かたちを保持できる物性強度があるということも重要でした。懸垂曲線みたいな柔らかそうなフォルムではなく、張りのあるフォルムを柔らかいものでつくりたいと考えていましたから。そういった条件を重ねるとアルミは適切な素材に思えましたね。

ただアルミと言っても、ほんの0.1mm厚みが違うだけで全然動きが違うんです。今回は0.2mm厚~0.5mm厚を原寸モックアップで実験してみて、最終的には0.4mm厚のものに決定しました。アルミ缶よりちょっと分厚いぐらいと言うとイメージし易いかもしれません。

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大野力 ストアインスタレーション「ROLLS」展示風景 Photo: Toshiyuki Yano

今回はアパレルショップでの期間限定のインスタレーションですが、どのようなことに重点をおいてデザインを試みましたか?また、通常のショップ空間のデザインと異なる点はどんなところに現れてますか?

純粋なギャラリーではないショップ空間での展示であることを考えると、商品の陳列を避けるように新たな別レイヤーとして作品を挿入するよりも、商品と作品が実際に絡む方が自然だと感じていました。そこで、いつも使われている島什器を全て撤去し、作品自体の上に商品を陳列することを提案したのです。それはつまり、陳列可能な商品量を考慮したり、動線を考慮したり、通常のショップデザインと同じような思考を作品の中に組み込むということでもありました。

逆に通常のショップデザインと異なったのは、やはり「既存が沢山ある」ということですかね。床壁天井やエントランス、レジ、フィッティング、ストックの位置など、もう既にそこにあって動かせないものが沢山ありますから、それらとの整合をとりながら計画していく必要があります。今回の場合で言うと、アルミの帯が通るルートは殆どそこしかないという配置になっていると思います。

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