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ロクシー・ペイン個展「機械装置」

HAPPENINGText: Ralph Yuu

自然界にはこの作品に似たことが起こる。地質、水や湿度、土壌、温度、そしてその他の様々な要素が長い時間をかけながら絡み合って、そして幾多の生物の進化や成長をもたらすのだ。同時に自然界の不規則性や不確定性が沢山の偶然を生み、多種多様な形へと昇華する。ロクシー・ペインと彼のハイテクな機械装置は、コンピューターの制御によってこうした状況を作り出し、様々な形の彫刻作品を生み出すのである。我々はひとつひとつに異なる彫刻の中に、現代人の視野に宿ったちいさな自然の創造を見る。人間は、様々な疑問を持ち、問い、答えを探すために人工物を創造することをやめられない生物なのだ。

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Roxy Paine, SCUMAK No.2, 1998-2001 / Low density polyethylene

18世紀に西洋で始まった産業革命以来、工業は世界の最も重要な関心事となり、現代生活のニーズの基礎となった。ロクシー・ペインによる人工的にアート作品を作り出す機械装置「SCUMAK No.2」。コンピューターに制御されたこの機械装置で生産された彫刻が並べられている様は、まるで工場のラインである。彼の作品は支配からの脱却を表現している。工業製品より不確かな、これらの彫刻作品。ベルギーの著名な現代美術家、ウィム・デルヴォイの機械作品「クロアカ」は、人間の消化器官を模した装置の中に食物を投入し、排泄物を製造するというインスタレーションだが、ロクシー・ペインの作品にもこれに通ずるものを感じる。彼の作品は現代美術であると同時に美術を覆すものでもある。どんなに我々の想像を超える美術作品があったとしても、それを作った美術家自身は常に人工物の支配下にあるということを物語るのだ。

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Roxy Paine, SCUMAK, 2008 / Low density polyethylene

人は自然界の中ではあまりに小さい存在である。たとえ人類全てをもってしても自然の前には太刀打ちできない。人間がどんなに緻密に計画しても自然をコントロールすることはできない。自然の不確定性から逃れることはできず、あらゆる科学者や、哲学者や、歴史家たちがいかに議論しようとも、自然は創造を続け、我々の予想を覆して行くのだ。ロクシー・ペインが投げかけるちいさなメタファーは、自然、人類、創造に関する我々の視野を広げる。この世界の変化を知ろうとする人類の探求心を駆り立て、問いや議論を生み続けてゆくだろう。

ロクシー・ペイン個展「機械装置」
会期:2010年4月24日〜6月13日
会場:ジェームス・コハンギャラリー
住所:上海市徐汇区岳阳路170号1弄1好楼1F
TEL:+86 21 5466 0825
https://www.jamescohan.com

Text: Ralph Yuu
Translation: Shiori Saito
Photos: Courtesy of James Cohan Gallery

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