今村育子

PEOPLEText: Mariko Takei

それでスクールの終了後にアーティスト活動を始められたのですね。

いえ、終了後も道に迷いながらも、企画という仕事に興味があったのでアートディレクターの仕事にも挑戦しました。いろいろと悩みながらも、アート活動はちょこちょこと続けていて、2006年に初個展「わたしのおうち」を開くことになったんです。その後、北海道でアーティスト・イン・レジデンス事業を行っているS-AIRの海外交流プログラムでメキシコに1ヶ月ほど滞在し個展を開催しました。また、札幌宮の森美術館で開催されたFIX・MIX・MAX!2(2008年)や、上海のM50芸術区で開催されたグループ展「雪国の華」にも出品しました。

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「おとどけアート(札幌アーティストインスクール事業)[ゆめのとんでんみなみ村をつくろう]」/ 2009 / 札幌市立屯田南小学校(札幌)

では一番最近の日本での活動は「おとどけアート」ですか?

そうですね。小学校で2週間創作活動を行うというもので、私は転校生という設定で、朝小学生たちと一緒に登校し、図工室で制作をしました。390名ほどの全校生徒が一人一個ずつ小さいお家を作り、それを展示し、最後に灯りをともし「ゆめのてんでんみなみ村」という街を制作しました。体験型のアートを子供たちに伝えたかったということがアイディアにあったのと、お家を作るということと、もともと興味の対象である明かりをともすということなど、もともと気になっていたパーツが組み合わさってできたのがこの作品です。

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「カーテン」/ 2010 / CAI02(札幌)写真:小牧寿里

今回CAI02で開催する個展「カーテン」について教えて下さい。

今回の作品は、暗闇の空間の中に配置されたカーテンの裾から明かりが漏れているというインスタレーションです。わたしは、扉の隙間からもれる光や窓からさしこむ光など、日常のほんの些細な光景をモチーフにした作品を制作しています。例えば、ドアの隙間の光だったり、カーテンから朝日が筋になって見えたり、煙が光に照らされて筋になったり、そういう瞬間を大きな空間で再現しています。

その日常の些細なことにどうして惹かれるかというと、日常生活を豊かにしてくれることは、日常に無数にあるからです。忙しくしているときに、ふと心が奪われる瞬間って、スイッチがパチンと入るというより逆に切れる瞬間であって、自分に戻れる感じがするんです。

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「わたしのおうち2」/ 2006 / 「FIX・MIX・MAX!現代アートのフロントライン」北海道立近代美術館(札幌)

カーテンの裾から光が覗くというイメージは、何か得に印象に残る過去の記憶や日常の思い出などに基づいているのですか?

例えば、2006年にやった個展「わたしのおうち」はイメージのもとになっている、小さいときの記憶というのがあります。夜、自分一人部屋で寝なくてはならなくて、電気を消して暗くなった部屋の扉の隙間から光が漏れ、親が歩くとその光が揺らぐということや、扉の向こうとの距離感などが気になっていた思い出があります。こういうふうな気になる記憶が沢山蓄積し作品に繋がったりしていますね。

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