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イン・シウジェン個展「第二の皮膚」

HAPPENINGText: Ralph Yuu

古着は、イン・シウジェンが最も好む素材のひとつである。なぜなら、古着というメディアはそれだけで時間、記憶、社会的な知覚といった意味を意識下に伝えてくるものだからである。彼女にとって、古い洋服のテクスチャーはフェミニズムと記憶の象徴。つまり古着は一人の人間の人生の経験を集め、それを伝えることのできるもの。日々の暮らしの記憶や思い出を具現化するものなのである。

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Highway, 2009. Clothes, stainless steel, aluminum panel, wood panel, and lamp. 329 x 654 x 200 cm

ペイスギャラリーで開かれたイン・シウジェンの個展「第二の皮膚(The Second Skin)」は、彼女の最新の個展で、包括的な内容になっている。作家は古着を人間の「第二の皮膚」として、つまり日常の経験を捉え、私たちの体へと媒介する新しいメディアとして定義する。彼女の別の作品「ハイウェイ」も記憶を留めることについての作品で、こちらは私たちを取り囲む環境が、いかにして一人の人間の日常経験の媒体として作用しうるかを描いたものである。ギャラリースペースの中に道路を作り直すという彼女の試みは、我々の暮らす環境と記憶の間に共通する関係性を浮き彫りにする。インスタレーションの一部として古着を用いることで、作家は我々が日常で経験する事柄と、現代世界の発展との関係を強調している。我々の現代生活がいかに退屈なものであろうと、どのようにして人は、人生と生活環境に愛着を感じていくのか。

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Leader, 2009-10. Clothes and concretes. 94 elements in total (72 cuffs + 22 collars, size varies per element)

色彩豊かな作品「心景(Heart View)」は、人間の、人生への態度を反映したものである。現代的な生活環境によって、我々はしばしば自分自身を環境に応じて変えようとする。そのような経験を通して我々の人生に対する態度はより複雑なものになっていく。ある意味では、我々の人生に対する考え方はよりカラフルになるという言い方もできよう。この作品に見られるカラフルな洋服の集合体が表現しているのは、人生の複雑さや、混沌として入り組んだ世界で人々が表す、人生への態度の機微である。

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鈴木将弘
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