大黒淳一「音の彫刻展」

HAPPENINGText: Mariko Takei

海外CM音楽や、最近だと2009年北京オリンピックでのアディダス・アートプロジェクトの音楽制作など、どのようにして音楽の仕事に関わるようになったのですか?

1998年に「エアロステッチ」というオーディオビジュアルのテクノレーベルを立ち上げて以来、2003年のワンドットゼロでセレクトされるなど、オーディオビジュアル作品を手掛ける活動をするようになりました。映像を作るのと同時に音で何か付加価値をつけたいというのが自分の中にありました。この活動と同時に、音響振動計測器メーカーでサラリーマンとして10年程勤めていました。音楽制作と、音響の会社での仕事をすることで、対比したものとして2つの目線で音を見てきました。ワンドットゼロで作品が上映されたことがきっかけで依頼があり、サウンドデザインワークを始めるようになりました。

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Opening Live Performance with Koss a.k.a Kuniyuki. Photo: Motohiro Sunouchi

映像や空間のサウンドデザイン、サウンドスケープ、メディアアート作品などを手掛けてますが、具体的にどのような活動をされているのですか?

空間のサウンドデザインに関しては、最近は、ビデオカメラに映る映像を音に変換したり、目に見える感覚をコンピューターのプログラミング上でアンビエントのような音で表現するというのをやっています。基本的には、空間の中で人と音であったり、自分自身がもっている感覚を音など客観的なものを通じて見る人に感じてもらいたいというのがあります。
サウンドスケープという部分では、海外行ってた時によくやっていたんですが、レコーダーを使って森の中や海などでフィールドレコーディングをして色んな音を録音していたのです。当時、北アイルランドのベルファストというところのレジデンスで2ヶ月程サウンドアートの作品制作をしていました。その時は、港の音や街の雑踏をミックス、再構築して、街の音風景、“サウンドスケープ”を作品として制作していました。

この春に新しいプロジェクト「43d」を始動するそうですね。どのようなプロジェクトですか?

まだベータ版なのですが、世界の各都市でフィールドレコーディングした音をネット上にアップできるサイトを作り、その音を使って世界の都市音をミックスして世界の音風景をつくろうというアンビエントレーベルプロジェクトです。プロジェクト名の「43d」は、札幌の緯度、北緯43°に由来しています。そのサイトに行くと、地球上の様々なエリアにある音の中から、自分で好きな音を選択してミックスできたりします。例えば、ニューヨークの雑踏とアマゾンの川のせせらぎがミックスされることで、自分が聴いたことのない音、新しい音楽の聞き方というものを提案できたり。このプロジェクトでは、サウンドスケープやアンビエントという要素を借りてインターネット技術を介した新しい音楽表現、新しい音楽の聞き方の提案を行い、そこからiPhoneアプリやCDというものにアウトプットしていこうと思っています。

今回、「音の彫刻展」で「耳で見る」空間を作り出した大黒氏。最近は、iTunesで配信する音楽のリリースをコンスタントにしていた中で、今春にリリース予定のテクノのコンピレーションアルバムにも参加しているそう。サウンドデザイン、サウンドスケープ、サウンドアートと、音を発信する側、受ける側に、新たな視野を広げる提案していく今後の活動にも注目したい。

大黒淳一「音の彫刻展」
会期:2010年3月6日(土)~24日(土)
時間:13:00〜23:00(日曜、祝日休館)
会場:CAI02 raum1
住所:札幌市中央区大通西5丁目昭和ビルB2
TEL:011-802-6438
主催:CAI現代芸術研究所
協力:Tamagawa kasei Co., Ltd / TriState Co., Ltd / Sound Project Co., Ltd / 43d
https://cai-net.jp

Text: Mariko Takei

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