山縣良和

PEOPLEText: mina

クリエイションの過程で重要視していることは何ですか?また、そのプライオリティについて教えてください。

どのような形であれまず、オリジナリティやクリエイションという部分に自分は重きを置いています。単純なクリエイションのときもあれば、結構複雑なクリエイションのときもあって、分かりづらい表現も沢山あるのですが、まず一番重きをおいているのはクリエイションです。「神々のファッションショー」もひとつのフィルターを通して見ないと、クリエイティブかどうかっていうところが分わかりづらいと思います。ただ布を巻くにも数千年以上の長い歴史があって、布を巻く行為そのものは、クリエイティブではないっていうことをよく言われたのですが、それは僕としても重々承知しているんです。だけどそれを分かった上で、布を巻くっていうのもモデル一人につき1反の布を巻き付けるというものは無かったであろうと。また神様というお題をそれにつけて、神様が一反の布を巻き付け、巻き終わった後の残ったダンボールの芯をくいっとまげて杖に作り上げるまでの行程は今までなかったのではないでしょうか。またファッションショーという発表形式で、限りなく制作日数を抑えて、最後の最後でやってしまうっていうこと自体も、クリエイションっていうかファッションのひとつの舞台としての見せ方として、今までなかった方法論なんじゃないかなと思います。

プライオリティですが、一番僕が他のデザイナーと違う視点はファッションの捉え方かなと思っていて、一番表現したいのは現象としてのファッションです。装い方であって流行であってというところが一番僕の興味を注がれるところであって、そこでの人間のコミュニケーションみたいなところに興味があるのです。それにどう関わっていくか、それをどう表現しようというところをいつも考えます。ファッションそのものを表現するデザイナーでありたいと思います。ですので、「裸の王様」もファッションを表現したかったのです。裸が意外に流行っちゃったみたいな、そういうファッションそのものを。

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© 山縣良和

ストーリー性のある世界観は、絵本からインスパイアされることも多いようですが、過去の体験なのか記憶なのか、今の山縣さんを構成させているものは何でしょうか?

本当に自然に自分に身についていたものと捉えていて、子供の頃からビジュアルでイメージを頭の中でして、何か物語を考えたり世界観を考えたりという、その延長線上でのものづくりや発想なのではないでしょうか。子供の頃から絵を描いたりするのも好きでしたし。自分が自然にやっていたのが、『あれ!? 自然じゃないのかな』って(笑)。絵本は好きです。やっぱり見ていて心地がいいので、自分を軽く見失ったときなんかに絵本はすごくいいなと思います。

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「the everyones new clothes」© 山縣良和

ファッションは拡散し流動していきます。山縣さんのコレクションへの反応などもそうですが、社会には共感と反発が常にあります。今、山縣さんの中にある共感と反発はどのようなものですか?

変な話ですが、共感と反発の外にいるような感覚があって、個人的な部分では多少の反発というかちょっと嫌だなって思うことはあるのですが、僕の表現という部分での舞台でいうと、反発と共感から1歩引いて表現し、それを肯定したいなっていうのがあります。個人的にアンチテーゼの感覚は無いのですが、善悪に関する情熱みたいなものはあります。アンチテーゼというよりかは逆に、否定されたくないという、否定されているものに対する肯定心です。なので、そういう否定されてるもの、アウトサイドに置かれてるものに対して、『いや、それっていいんじゃないか』ということを表現したくなるのです。否定するのではなく、肯定できるものを増やしたいのではないでしょうか。しかし何でも良いという訳ではなく、一つだけとてもこだわっている所があって、現代性があるかどうかが僕の視点で最も重要です。現代においての社会性があるかどうか、それが重要です。それを踏まえた上で、ゴミから神さまが僕のファッションにおいての表現です。

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Photo: Koomi Kim

セントラルセントマーティンズ在学中に、「A LONG STORY」という大きなブラジャーの作品をつくられていましたね。

2年生を終えて休学したのですが、その休学中に作りました。「A LONG STORY」は、8人がそれぞれ別々の服装をしている、すごく辺境の村に住んでいる人たちのコレクションというイメージです。少し脱線しますが、「A LONG STORY」にはストーリーがあって、そこに「written by yosikazu yamagata」と書いたのですが、僕はよく物語をイメージしながらデザインをする事が多いのですが、書いた後に、「written by~」とよく書いていました。そこからwrittenという部分の響きがずっと頭の中にあり、ブランドの名前にいれました。

それでコレクションですが、魔女とかホームレスとかひとつひとつ背景にストーリーを考えて、デザインしていきました。ファッションデザインを目指す田舎の女の子とか。それで、デザインの工程も彼女のイメージを考えて構成していく方法をとりました。大きいブラジャーは、いたずら小坊主がいて辺境の森の近くに大きな怪獣が住んでいて、その怪獣から最初は服を盗む。引きずって盗んで行くんですけどその後に小坊主は下着泥棒になって、ブラジャーを盗み、ピンクの子豚もついてくるっていうようなストーリーを考えてファッションショーをやるという。ストーリーを先に考えた方がイメージが湧きます。この人はこういう風な生活しているからこういうものを持っているな、とか。全体で考えていって、空間も考えて、そこから服に落とし込んだようなイメージで考えます。

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