カウライス

PEOPLEText: Justin Tsui

2人それぞれを5つの単語で表現するとしたら何になるでしょうか?

グレースは感傷的、シンプル、天邪鬼、辛抱強い、そして母親ですね。
フィリップは自己中心的、複雑、天邪鬼、人の気をそぎやすく、また父親でもあります。

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フィリップはこれまでに素敵な8mmフィルムをいくつか撮っていますよね。その中で1番のお気に入りとその理由を教えてください。

一番気に入っているのは2007年に撮ったものですね。タイトルは「シャー・ティン・タウ村で過ごした時間」です。内容はグレースが妊娠してから娘が生まれるまでの断片的な映像を集めたものです。とても静かな時間が流れていて、今でも一番懐かしいと思える時で、1年間シャー・ティン・タウ村でひっそり離れて暮らしていた時のことです。映像の中に流れる音楽はいたってシンプルで、編集などしなくても映像とぴったり合うんです。日常生活を通して得た感覚が表現されています。このビデオ自体は私の妻への贈り物ですし、シャー・ティンでの暮らしにとても思い入れがあるということを彼女に伝えてもいるんです。

現在地元のインディー・バンド「フォールス・アラーム」のメンバーとしても活動していますが、香港のインディーズ音楽シーンについてはどう思いますか?

香港のインディーズ音楽は今では、とても多様になりました。沢山のミュージシャン達が自分たちの音楽作りに専念しようと必死です。メディアだけがオルタナティブだとか限定的な音楽だとかみなしていますが、殆どの人はこういった意見も、ただ彼らの音楽を一般的なものにしようとしているだけだと捉えています。こういった状況の下では、少数派は少数派にならざるをえません。将来性が否定されつつありますが、魅力的な特色はこの少数派の中に息づいているんです。

日常生活を題材とした作品の中でも凄く上品な写真も撮っていますよね。写真に興味を持ち始めた経緯を教えて下さい。

2003年に僕とグレースがロモ・カメラを手に入れて以来、写真を撮るのが好きになりました。生活の一場面を捉えるフルカラーのスナップ写真をひっきりなしに撮り続けていて、おもしろくて新鮮な画像が撮れるんです。その写真はまさに僕らの青春時代をそのまま表現していました。それ以来、写真には興味を持っています。記事を読んだりして写真についてもっとよく知ろうともしました。僕たちが成長して生活も変化し、結婚、妊娠、子供の誕生、そしてお互いに様々な事を経験していくうちに、物の見方も変わってきました。今では物事を落ち着いて、あるがままに見る事ができるようになりました。僕らの人生を記録しておきたいし、そこでアナログカメラは僕らの目の代わりをしてくれるんです。僕らにとって写真は言葉よりも多くを表現してくれます。写真の映像は、より多くを自分で考えさせてくれるから。より感情を直接的に表現してくれますが、同時に曖昧な部分も持ち合わせている、と言えます。

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グレースは「Capture The Fleeting Moments of Life(人生の過ぎ去る時を捉える)」という題の本を出版していますが、どういった内容なのですか?この本を作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

2009年に出版したこの本は、私個人の生活を紹介する目的で出版しました。この本の中には私の日常生活が短い文と写真、イラストで記録されています。私の人生に対する考え方を伝えたかったんです。それは穏やかな部分も、また相反する部分も持ち合わせています。仕事や家族、夫婦関係、親子関係に対する考え、さらに個人的な意見も表現しています。他の皆と同じように、人生はシンプルなんです。でも、その人生をできる限り楽しもうとしています。人生の中で起こるどんな小さな事も気にかけるようにしています。私にとって言葉と映像だけが時を瞬間冷凍して残してくれるものなんです。ここ数年は夫に関することから娘の事まで、常に人生が移り変わってきています。でも、それも私には予期しなかった安らぎを与えてくれるんです。

実は、本の出版は過去4年間の計画には入っていませんでした。絵や写真で私の人生を記録していましたが、それは大きな意味があってのことではありませんでした。文章を書くのが凄く上手なわけではありませんが、本能の赴くままに作品を作り続けています。周りの人々や出来事から影響を貰いますね。夫と娘は一番の題材です。

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