NIKE 公式オンラインストア

欧州文化首都リンツ 09

HAPPENINGText: Daniel Kalt

私にとって印象深く忘れられない3つ目のプロジェクトは「イン・シチュ」。リンツ内65箇所のスポットが、地面にスプレーで描かれたステンシルの文字によってハイライトされる。とても美的なこれらのオブジェクトのいくつかは、心がかき乱されるような内容を含み、何よりその場所で民族社会主義者による恐怖政治時代の歴史的な出来事があったという明白な記録を残す作品である。

InSitu_1.jpg
© Dagmar Hoess

リンツはアドルフ・ヒトラーの生涯において重要な役割を果たした最初の都市である。ヒトラーはこの付近で誕生し、ウィーンの美術大学の受験に失敗する前にこの地を訪れている。彼はウィーンよりもリンツを好み、リンツのために重大な計画を図ったのである。結果リンツ09のオーガナイザーと美術監督は、この街が欧州文化首都である年内に民族社会主義時代の出来事が無視されることを拒み、1938年から1945年の間にリンツで起こった歴史について非常にオープンにかつ謹み深い手法で触れるという決断をした。「イン・シチュ」は、この街のこうした歴史的側面を明らかにし、訪れる人々や市民の記憶に焼き付けるために制作されたプロジェクトなのである。

BiennaleCuvee_2.jpg
Su-Mei Tse – Swing, 2007, installation view from the Singapore Biennale, 2008

BiennaleCuvee_3.jpg
Julita Wójcik – Making things more beautiful, 2007. Photo: Otto Saxinger

OK現代美術センターは、リンツの現代美術館の中で最も大きな美術館では(そして最も高価な美術館でも)ないが、とても良質で心を打つプログラムをリンツ09のために行っている。最初の企画は、世界中のビエンナーレから集めた魅力たっぷりのセレクションで行った「ビエンナーレ・キュヴェ」。このような展示が身近な文化首都で行われるのならば、もはや世界中に広がる美術の中心スポットへ旅行する必要はない。その次に行われた展示は「フーエンラウシュ(最上の喜び)」。この展示では館内スペースを拡張し別館を作り、空の店舗やショップウインドウを建てたり(2007年)、洞窟や地下室を造ったり(2008年)した三部作の第三弾である。著名アーティスト達(アーウィン・ワーム、リキッド・ロフト、ピピロッティ・リスト、ローマン・シグネールなど)が天井を沿う通路にディスプレイを行った。

HoehenrauschHoch_c_OK.jpg
© OK

この展示の目玉はおそらく、建物の天井の上に立てられた巨大な観覧車であろう。勇気ある来訪者はリンツの空高くから街を見下ろすという一生に一度の体験をすることができる。10月31日までの会期中、決して見逃せない。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE