ティモシー・サセンティ

PEOPLEText: Mariko Takei

ビデオ作品や写真を手掛けるようになったきっかけを教えてください。

ティーンエイジャーだった頃は、光やその変形するパワーに興味があって、アートや音楽にもとても惹かれるものがありましたが、どちらにも器用ではなかったです。僕の描く絵は、良くて目の見えない4才の子が描いた絵と言ってもいいくらいでした。でも、写真というものを発見してから、光への興味や好奇心と、カメラという機械の助けを借りてアートを作るという望みを融合させることができることに気付いたんです。飛んで火にいる夏の虫状態となって、起きてる間は撮影するか暗室にいるという日々を過ごしました。初期の頃のPhotoshopなどが装備されたコンピューターセンターと暗室のある高校へ通うことができたのはとてもラッキーでしたね。これが16才くらいの話ですが、今でもその燃えるような好奇心を持っています。結果として、ニューヨークでミュージシャンの写真を撮影するプロのカメラマンになりました。それで、ミュージシャンから今度は彼らの映像を撮ってほしいと頼まれるようになったのです。映像制作をちゃんと学んだことはなかったけど、被写体についてはできるだけ多くの情熱を注ぎ、迷惑だったに違いない僕からの質問にも答えてくれた映像のディレクターや編集を手がける友人にも恵まれてましたね。

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“Garden of unearthly delights”, DIESEL DENIM GALLERY AOYAMA, 2009 © Timothy Saccenti

映像と写真という2つの異なるビジュアル表現をする中で共通していることはありますか?

映像作品は、単純に毎秒24フレームの集まりです。“残像”という現象を通して、途切れのないものに見えるのですが、僕は映像をスチルフレームの集合体として捉えています。ひとつの静止シーンから次へと繋ぐような流れを作りたいと思っていて、静止画の作品を一連のイメージとして捉え動きのある作品に取り組んでいます。そのため、僕の最大のハードルは編集することですね。編集や一定のテンポで彫刻するということには言葉でうまく表現できない芸術性があると思っています。僕は幸運にも、世界で最高の編集者の一人だと思っているライアン・マッケンナと一緒に仕事をしています。ライアンは華麗な編集スタイルをもっていて、拍に合わせてカットするとか、トリックを使った場面転換など、映像編集でよくある慣例は避け、まるでスケートボーダーのようなアプローチをするんです。滑らかな動きと、トランジションの際に稀に出るキック・フリップをミックスして流れるような動きを作るみたいな感じです。

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“Garden of unearthly delights”, DIESEL DENIM GALLERY AOYAMA, 2009 © Timothy Saccenti

今回世界初となる自身の個展「Garden of unearthly delights/この世ならぬ歓びの楽園」を日本で開催するとのことですが、どのような展覧会になるのでしょうか。展覧会コンセプトや内容をご紹介ください。

幸運にも、初の個展を開催できることとなりました。ここしばらく取り組んできたアイディアを元にしたプロジェクトですが、今回の作品は全て新しいものを展開しています。命の木から栄養を採る2人の典型的な登場人物についてのエデンの園のストーリーで、そのアイディアは、空想的な環境で撮影した2人のヌード女性を起用して表現しています。映像作品と巨大なパノラマプリントの作品を展示します。

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