プリマベーラ・サウンド 2009

HAPPENINGText: Julio Cesar Palacio

チケットが全て完売でスタートした3日目の最終日。チケットが完売だなんて信じられない。今までそんな事は聞いた事がないし、なにしろ会場はとても巨大で満席にするなんてほとんど不可能なのだから。しかしその夜、プレイすることになっていたのは、あのニール・ヤングだったのである。

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Jayhawks

最終日は、ATPステージに登場したローファイバンド、アリエル・ピンクによるアリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティのサイケデリックな音で幕を開けた。エストレヤ・ダムステージは、ジェイ・ホークスの激しい演奏で揺れていた。再結成した彼らは、今回がバルセロナで初めてのコンサートである。
レイバン・ヴァイス・ステージでは、ジェレミー・ジェイの音響機材に問題が発生していた。最終的には彼がショーを行う事ができたのかどうか分からない。しかし、スタッフ達が修復作業をしている間、彼はステージを降り、観客と気さくに喋っていた。

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Jeremy Jay

突然、集団が一斉に同じ方向へと動き出した。群衆の中には、昨日までの若者達とは打って変わって、白髪混じりの人々が多く見られ、いよいよ“彼”がステージへと現れる時間が近づいていることは明らかだった。
二ール・ヤングのステージには、プリマヴェーラ史上最多の観客が訪れたに違いない。バンドもヤングも一心不乱に歌い、演奏し、殆ど休む間もなく続いた2時間は本当に素晴らしかった。会場全体が、ヤング、彼の音楽、バンド、そして長年私達に影響を与え続けてくれた歌に、ただただ身を任せていた。

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Sonic Youth

ショー終了後も観客はステージを離れようとはしなかった。というのも、その後にスタンバイしていたのは何を隠そう、大御所ソニック・ユースだったのである。常に時代の先端を行く音楽を生み出してきた彼らの演奏を聞き逃すまいと、皆がその場に留まっていた。新アルバム「エターナル」を披露した彼らのお馴染みのラインアップは、今回少し違っていた。この日ベースを演奏していたのは、元ペイヴメントのマーク・イボルドだったのである。
彼らはこれまで、ほとんど2年置きにプリマベーラで演奏してきた。きっと観客皆が、これから先もずっと同じように彼らの姿を観たいと望んでいたに違いない。バンドの中に佇んでいた音やエネルギー、魅力はやはり変わらず昔のままであり、ショーもまた素晴らしいものだった。

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Sonic Youth

そんな余韻を感じながら、フェスティバルはいよいよ幕を閉じようとしていた。レイバン・ヴァイス・ステージに現れたのはガレージロックバンド、ブラック・リップスの面々。観客は曲に合わせて踊り、飛び跳ね、フェスティバルの最後まで楽しんでいた。バンドは激しいモッシュを呼び起こすショーに定評があり、それ故にここプリマベーラの地へと招かれたのである。

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今年はこれまでに負けず劣らず魅力的で、面白く、熱狂的で、心に響く素晴らしいフェスティバルだった。何より主催者側にとっても、例年にない不景気の中でこれだけの成功を収めたというのは、実に大きかったはずである。プリマベーラを取り巻いていた空気こそ、音楽を愛する街や人々がこの1年間待ち望んでいたものではなかっただろうか。もう、今年は終わってしまったかと考えると寂しい気持ちになる。ただただ来年が待ち遠しいばかりである。

Estrella Damm Primavera Sound 09
会期:2009年5月28日〜30日
会場:パルク・デル・フォルム
http://www.primaverasound.com

Text: Julio Cesar Palacio
Translation: Yuki Mine

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