ルーブル・アブダビ

PLACEText: Mamiko Kawakami

ヌーベルの中東での新たな挑戦はというと、キュポラ(ドーム)をデザインコンセプトに選んだ事。キュポラはアラブ建築の典型的スタイルであり、また全ての文明に見られる一般的な形だからと同氏は説明する。 そのドームは“半透明の屋根と不規則に折り重なる網目模様の隙間から差し込む日光を生かすアラビア建築に見られる素晴らしい仕組み”が使われている。「この網目模様のドームは文化の世界的リンクも表す」とヌーベルは語る。

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このドームが建てられるサーディヤット島は、砂漠と海が隣り合わせというあまり他に例を見ない地形。海岸線にはサンゴ礁と、水面に浮く庭園に囲まれ、この美術館はまるで水面を漂っているようだ。

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キュポラは一見、巨大な一枚屋根にも見える。『ルーブルアブダビは4つの基本元素(地・火・水・風)の観察に影響を受けている。』とヌーベルは説明する。二層構造の180メートルのドームは「光と影、静寂さと光の反射を体験する世界」を造り出すため、複雑な構造がなされている。そんなヌーベルの新ルーブルのコンセプトは“ミクロシティー(微細な都市)”。『このミクロシティーの中は、訪れた来館者が別世界に入ったと感じられるようなミクロ(微)気候でなくてはならない。』とヌーベルは語る。彼はそんな平静でいて複雑な構造を持つ新ルーブルを「大きなパラソルで守られた海に浮かぶ小さな島の数々」と表現する。彼は、「人間は温度の変化に弱い、それはアートも同じ」とする。

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このミクロシティー美術館は、古典的美術作品や文化遺物と美術館が位置するイスラム圏の文化を共鳴させる。 それにはヌーベルの、単なるそっけない直訳っぽくなったり、ありきたりでトラブルを呼ぶような解釈ではなく、その国、歴史、地理に溶け込みたいというコンセプトが根底にある。

アラブ首長国連邦大統領兼アブダビ首長のシェーク・カリファ・ビン・ザイード・アル・ナフヤンの描くアブダビの未来像は「世界の文化資産」で「異文化経験や交流の拠点」となる事。単なるクラッシックアート美術館の設立に留まらない、このアートプロジェクトへの二国間の協力が合意された事は、大統領の未来像への土台を創ったといえる。友好的な雰囲気で進められたプロジェクト着工式典を終え、アブダビを世界文化の交流点としたいというルーブルアブダビにかける望みをかなえる歴史的第一歩を刻んだ。

この注目が集まるルーブル・アブダビ、完成はいよいよ2016年後半と発表された。フェイスブックのルーブル・アブダビページで最新のアップデートやイベント情報をチェックすることができる。

Louvre Abu Dhabi
開館時間:10:00~20:00(木・金曜日22:00まで)
休館日:月曜日
住所:Saadiyat, Abu Dhabi, UAE
入館料:一般 63.00 AED
TEL:+971 600 56 5566
https://www.louvreabudhabi.ae

Text: Mamiko Kawakami

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