川元陽子

PEOPLEText: Mariko Takei

川元陽子
Yoko Kawamoto, Untitled, Oil on canvas, 652 × 409 mm, 2006, Courtesy of the artist and NANZUKA UNDERGROUND

『光を描きたいために天気の良い日に撮影する』という川元氏の、写真をもとに描かれる、独自の視点で切り取った数々の風景は、過去の記憶の中に埋もれた景色を掘り起こしていくかのように、ノスタルジーに包まれた気持ちを引き起こす。そして、今まで気にも留めることのなかった、記憶の端っこにひっそりと佇んでいただけのものが、なぜか魅力的で気になる存在として見る人の記憶にインパクトを与える。しかし、川元氏が『絵にストーリーや意味はありません』と言っていることから分かるように、絵の中に込められたメッセージなどはない。彼女が捉え描く風景の絵は、『見捨てられた風景』『ただそこに在るだけの風景』であるのと同じように、ただただわたしたちの目の前に展開されていく。

川元陽子
Yoko Kawamoto, ELEPHANT, Oil on canvas, 318×410mm, 1999, Courtesy of the artist and NANZUKA UNDERGROUND

独学で絵を書き続けてきた川元氏のそのキャリアと、作品に注がれた純粋な情熱に感銘を受けたことから、NANZUKA UNDERGROUNDの南塚氏は展覧会の開催を決めたそうだ。個展「for the present」の開催を目前にした南塚氏にコメントを寄せていただいた。
『この展覧会のタイトル「for the present」は、「しばらくの間」という意味ですが、“人の計算や意図が見えない風景”だけを好んで選び、描いている川元の世界観をよく表していると思います。川元の絵画には、人の時間を止める不思議な魅力があります。是非、実際に作品を目にして頂ければと思います。』

また、TOKYO CULTUART by BEAMS出版による作品集「YOKO KAWAMOTO」も数量限定で発売中。

川元陽子個展「for the present」
会期:2009年5月16日〜6月13日
時間:11:00〜19:00(日・月・祝日休廊)
会場:NANZUKA UNDERGROUND
住所:東京都港区白金3-1-15 SHIROKANE ART COMPLEX 2F
TEL:03-6459-3130
入場:無料
http://www.nug.jp

Text: Mariko Takei

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