WASARA

THINGSText: Mariko Takei

使用素材に葦と竹、バガスという、さとうきびの搾りかすのバルブを使用しているとのことですが、この素材について教えてください。着目したきっかけや、使用上の利点や環境面についての利点も教えてください。

食品用の容器を製造する際、蛍光塗料が混在することを防ぐため、古紙等の再生紙を使用することは禁止されており、既存のほとんどの紙皿・紙コップはバージンパルプ(はじめから木材を材料にして製造したパルプ)が使われています。WASARAは、一度しか使えない食器を作るために貴重な資源を使うのではなく、捨てられたものや枯渇する心配の非常に低いものを原材料にすることがテーマでした。様々な材料を検討しましたが、コストや成型への適合性などから葦と竹、バガスにたどり着きました。

葦や竹は年間数メートルも生長する生命力の強い多年草です。栽培などの農業管理をしなくても大量に繁殖し、1年サイクルで刈取りが可能で無尽蔵にあるといえる原料です。
また、さとうきびは年間生産量は約12億トンにものぼる世界第7位の農産物です。砂糖生産に必要な糖汁を絞った後に茎や葉など大量の残渣(搾りカス)が発生し、この残渣が「バガス」と呼ばれるもので、世界中で約1億トンもの排出量があります。製糖工場では、バガスをボイラーで燃やして機械の稼動エネルギーなどに利用していますが、アジアや南米などの大規模工場では大量の余剰が発生しており、木材パルプではなくバガスパルプを使用することによって資源の有効活用と森林保護に繋がっています。

WASARA

バルブ製の器を作る上で苦労した点がありましたら教えて下さい。

「パルプ製の器」自体はすでに市場に多く送り出されています。紙で形を形成する「パルプモールド」という商品郡です。漉き型を使う和紙の作成方法を立体的に応用した製法といえると思います。同類の製造方法で作られる良く知られている容器として、紙製の卵のパックを挙げることができます。
WASARAの素材である葦や竹、バガスは大変繊維が短く、従って細長い形状を実現することが難しいです。平らな皿類は比較的早い段階で商品として市場に出すことができましたが、器類やカップ類など、深みのある商品については成型の難しさから開発に時間がかかりました。また、従来の紙皿・紙コップに見られるのりしろのような余剰部分や、くるっと曲げられたフチをなくすことによって、工業製品的な雰囲気を極力排除しています。皿類のフチや器・コップ類の口当たり部分を、きれいにトリミングすることによって、陶器製の器やガラス製のカップのように形状を実現しました。これは従来の紙製簡易容器に用いられたことのないトリミングの技術でしたので、製品として市場に出せる状態になるまでかなりの開発時間がかかりました。

葦やバガスを使用して器以外に展開したいと思っていることは何かありますか?

ライフスタイルを構築する家具やインテリア類にも応用してみたいですし、現在バージンパルプで作っている様々な物が、機能をそこなわず、バガスに転換できればと思います。

WASARA

WASARAの今後予定している展開について教えてください。

今年から海外への展開を予定しています。特にヨーロッパはエコロジーへの取り組みが国家レベルで活発で、ブラスチック製品からWASARAへの転換を図るよい機会になると考えています。また、欧米はパーティー文化が成熟していますので、個々人のホームパーティーからハイエンドと呼ばれるクラスの大規模なパーティーまで、積極的にWASARAを使ってみたいと興味を持ってくださっています。来年はまた違ったエリアへのアプローチを図り、WASARAが紙の器のスタンダードとなるよう働きかけていきます。

WASARAの器は、国内のインテリアショップやセレクトショップで取扱いがある。ショップリストはこちらから。また、オンラインショップでも購入が可能だ。和モダンテイストの器で特別な食事を楽しみ、環境と心を潤すひとときを過ごしてみるのもいいかもしれない。

Text: Mariko Takei

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE