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ウィーン・カフェ・フェスティバル

HAPPENINGText: Sayaka Hirakawa

新聞が各家庭に配達される習慣がまだ無かった当時、カフェで読む新聞とそこで交わされるうわさ話が、彼らの主な情報源だった。

ウィーン・カフェ・フェスティバル

気分転換には別室でビリヤードやチェスを楽しむこともできたし、オペラやお芝居を提供するカフェさえあったという。ぱりっとスマートにギャルソン服を着こなしたウェイター達は、競って常連客の名前、好みの飲み物、新聞を覚えたというのだから、奥様の待っている家に帰りたくなくなってしまう夫衆も多かったことだろう。

ウィーン・カフェ・フェスティバル

さて、カフェの歴史、インテリアのデザイン、サービスに触れた展覧会の最後は、カフェにインスパイアされた現代の学生たちの作品が並ぶ。特に惹かれたのが「Hitomi Hosono」の「スプーン・オン・スプーン」という作品。白い陶器にアンティーク・シルバースプーンのプリントがのせられている。レンゲの様なシルエットと、繊細な銀製品のラインの組み合わせが新しい。時代を超えて出会った異素材のハーモニーが、カフェの時間をよりいっそう楽しくしそうだ。

ウィーン・カフェ・フェスティバル

あらゆる日々の些末なことから離れて、集中して物事に取りかかろうとするとき、カフェを利用する人は少なくないだろう。または、友達とただ会っておしゃべりに花を咲かせる日もある。隣に座った人と、偶然に会話が始まるかもしれない。カフェは、ストーリーが始まる要素をふんだんに含んでいる。きっとそれは100年近く前のウィーンのカフェでも、そしてわたし達のいきつけの、あの近所のカフェでも。そう思いながら、わたしはこの原稿を書き終える。もちろん、プールを見下ろすことのできる、いつものカフェで。

ウィーン・カフェ・フェスティバル
会期:2008年10月7日〜24日
会場:ロイヤル・カレッジ・オブ・アート他
住所:Kensington Gore, London SW7 2EU
TEL:020 7590 4482
http://www.rca.ac.uk

Text: Sayaka Hirakawa
Photos: Sayaka Hirakawa

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