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イラストレイティブ・チューリッヒ 08

HAPPENINGText: Peta Jenkin

イラストレイティブは、パリのポンピドゥセンターで開催されるような展示会や、ニューヨークのロウアーイーストサイドにあるギャラリーででくわす商業主義的な側面で企画されたグループ展とは異なる特徴を持っている。イラストレイティブは出展アーティストに営業機会を提供するよりも、イラストというアート表現の一般理解を向上させることの方を重視している。時にそれはアーティストにとっては意地悪にも思える。

イラストレイティブでは日本からのTaiko&Associatesをはじめとした、いくつかのクリエイティブエージェンシーが参加していた。イラストレイティブはフォーラムとしての一面を持っていて、関連のある産業との連動も視野に入れていることがわかった。しかし、主催者が考えていたほどその試みは成功していなかったように思える。しかし、どうか私の意味を取り違えないでほしい。私はフリーズアートフェアが持つような企業的な性質に毒されてから、イラストレイティブを訪問したのではない。しかしイラストレイティブで見ることのできる作品は本当に純粋で商業的な側面からも守られている。イラストレイティブではその分野をリードする素晴らしい作品を驚くほど沢山見ることができる。

商業主義的な要素を少しでも持ってしまうことによって、イラストレイティブのようなイベントはその意義を見失ってしまう。オープニングナイトに参加してみても明らかに商業主義的な要素が欠けていることを確認できた。

上記のような状況をふまえても、ヤングイラストレーターズアワードはイラストレイティブの中でもアーティストを激励する側面を持っているものだった。アワードではイラストレーション、ブックアート、アニメーション、スウォッチ賞の4カテゴリーそれぞれで賞が設けられ、全4人の新々気鋭の若手アーティストが賞を勝ち取った。

 Illustrative Zurich 2008
The winners of the Illustrative Award, with Curator Pascal Johanssen Photo: Sebastian Garbsch

イラストレイティブは今年スイスで行われた。スイスでは日々、無数の銀行口座の取扱いが行われ、精密時計製造が行われている。そのような場所で30人ほどのスウォッチコレクター集団がイラストレイティブで行われたクラブミーティングのためのイベントにおしかけるのを見ても全く驚かなかった。なぜなら同じような光景がヨーロッパでは日常的に見ることができるからである。一人のスペインから来た中年男性(匿名希望者)は15,000個を超えるスウォッチ時計コレクションを自慢していた。もちろんコレクションの全ては男性が所有するフラットに保管されている。

スウォッチはイラストレイティブに2つの新しい時計デザインを依頼した。この時計は多くのスウォッチファンを魅了し、3,333の中からたった一つだけ会場に展示された時計の写真を撮影するため多くのファンを会場へ呼び込んだ。スウォッチは例年通りイラストレイティブで派手な時計デザイン界に対して貢献することができた。これはスウォッチがデザインとイラストレーションの世界で起こっている最新トレンドと連動するための試みである。

イラストレイティブはフォーラムでもなく、フェアでもなく、単なる展示でもない。その強みはイラストレイティブに参加するアーティストや作品の多様性にあり、それは展示されている作品の多さだけをとってみても顕著だろう。私たちの多くは眠る時に読んでもらう絵本などで幼少のころからイラストに触れ合っている。私たちのイラストに対する強い興味はそれからも消えることはない。そのような沢山のイラストに一つ屋根の下で見ることができたのはとても楽しむことができ、大人になった今でもお菓子屋さんにいるような気分にしてくれるものだった。

Illustrative Zurich 2008
会期:2008年10月17日〜26日
会場:Messehallen Zürich (Halle 9)
住所:Thurgauerstr. 11, 8050 Zurich, Switzerland
https://www.illustrative.de

Text: Peta Jenkin
Translation: Masanori Sugiura
Photos: Peta Jenkin

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