鈴木ヒラク

PEOPLEText: Mariko Takei

10月にノルウェーで壁画の滞在制作やライブペインティングなど行われたようですね。今までにどの都市(国)でどのような活動をされているのでしょう?海外での反応はいかがでしょうか?

今ちょうどノルウェーのフィヨルドに近いスタバンガーという街でこれを書いています。ザリガニのようなエビがおいしいです。今日は部屋で12枚の絵を描きました。昼間は壁画をやっていました。EU-JAPAN FESTとスタバンガー市の事業の一環で、石油産業に使われていた巨大な廃材で作られたジオパークという新しい公園に描くことを依頼され、白のペンキだけでいくつかの廃材を部分的に塗りつぶしたり、線を描きました。がちゃがちゃした風景に白が点在して、発掘途中の、別の文明の遺跡のようになってきています。

鈴木ヒラク
SHLL, 2008, 壁画, GEO PARKEN(スタバンガー、ノルウェー)Photo Courtesy of the artist © Hiraku Suzuki

自分は今までギャラリー等を通して海外に行けているわけではないから、直接理解してくれる外国人や日本人にたまたま少しだけ出会っているのかもしれない。そんなに沢山行っているわけではないけれど、どこに行っても、基本的に僕がやることは変わらないみたいです。日本も面白いし、今借りている東京の自分のスタジオと、その周りの環境が大好きです。

反応といえば、先日はメキシコシティの国営放送のTVクルーが僕のスタジオに来てくれたのですが、一瞬で核心をつかれて、逆に冷や汗をかきました。「君の作品は、深い森のような都市の混沌と、個人的で実験的な夢の相似点について、考古学的な方法で追求しているように見えるけど、どう思う?」とか。実験的な夢というキーワードは、ちょっといいなと思いました。メキシコは去年旅の途中で立ち寄って2週間くらいぶらぶらピラミッド見たり、リス見たり、タコス食べたりしていましたが、親近感と同時に、絶対に理解不能な部分を感じました。壁画家のシケイロスもいたし、気になる国です。

鈴木ヒラク
Night Mask, 2008, 反射板、木、ミクストメディア, 86cmx57cm Photo: Ooki Jingu © Hiraku Suzuki

11月に札幌で開催される現代アートのイベント「FIX・MIX・MAX!」に道外アーティストとして参加されるようですが、どのような作品を作る予定でしょうか?

今はノルウェーの寒さの中で、来月の札幌の気温を想像しています。北海道は本当に好きな場所なので、楽しみにしています。

好きな音楽やアート、映画、本など教えて下さい。

音楽:今このMacBookから流れているのは、スチャダラパーの「彼方からの手紙」です。

アート:このまえ僕のスタジオに泊まっていたトニー・コンラッドさんというニューヨークのアーティストの姿勢には、強い感銘を受けました。一緒に川沿いを散歩したり、カラスに話しかけたり、セミの音を聞きながら楽譜を書いていました。いま横浜トリエンナーレで彼の作品が展示されているので、機会があればぜひ見てみて下さい。

映画:途中で寝てしまうので最近あまり見ないですが、黒澤明の「どですかでん」は絶対に凄いと思います。

本:最近は山本精一氏の文章が好きです。

インスピレーションを受けているものや事柄について教えてください。

「道路」っていう存在そのものにインスピレーションを受けます。道路には全部あると感じます。道を歩くことは、音楽を聴くことでもあるし、映画を見ることでもあるし、本を読むことでもあるし、体全体で地形をスキャンすることでもある。ふと見ればキノコだって生えている。

鈴木ヒラク
Safari, 2006, 壁画, ギャラリードゥジュール(パリ、フランス)Photo: Ryo Suzuki © Hiraku Suzuki

今後やってみたいことはありますか?

今まで通りにやってみたいです。

今後の予定を教えて下さい。

来週帰国します。その2日後にアニエスベーのイベントがあり、デザイナーのアニエスさんと一緒に作ったバッグや服が発売されます。そして10日後にFIX・MIX・MAX!の搬入が札幌宮の森美術館ではじまります。
来年初頭はシドニーで滞在制作を行い、日豪6組の作家によるグループ展にて発表します。

その他は、友人であり、素晴らしいウェブデザイナーである風祭麻美さんが作ってくれている僕のサイトを、興味あれば見てみて下さい。たまに更新してもらっています。

FIX・MIX・MAX!2 −現代アートのフロントライン−
会期:2008年11月8日(土)〜12月7日(日)
開館時間:11:00〜19:00(入館は18:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
会場:札幌宮の森美術館
観覧料:一般300円 高大生200円 中学生以下 無料
主催:FIX・MIX・MAX!実行委員会
後援:北海道 北海道教育委員会
参加予定アーティスト:今村育子、榎忠、岡部昌生、鈴木ヒラク、高 幹雄、高橋喜代史、武田浩志、ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ、久野志乃、近未来美術研究所、端 聡、祭太郎
https://www.fixmixmax.com

Text: Mariko Takei

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