鈴木ヒラク

PEOPLEText: Mariko Takei

ウォールペイント、紙に描かれた作品、葉脈を使ったドローイング、アスファルトのかけらを使った作品、ライブペイントなど、表現媒体が様々ですね。作品を作る素材やその手法など、どのようにして決定しているのでしょう?いくつか作品をご紹介頂けますか?

現在は6つくらいの異なる方法によるシリーズを継続して制作していますが、全てドローイングの一形態と捉えています。例えば、曲がった枯葉の葉脈をつなげて線を作ったり、バラバラな場所から集めてきたアスファルトの白線部分をつなげて新しい記号を作る作品にしても、あくまでそれらの素材を使って「描かれている」という痕跡性が重要で、手法としてのコラージュ的な感覚で終わらせないようにしています。そうでないとやった気がしない。

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bacteria sign #30, 2008, 土、枯葉、アクリル、木製パネル, 180x180cm Photo: Riichi Yamaguchi © Hiraku Suzuki

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bacteria sign#17 (detail), 2007 Photo: Riichi Yamaguchi © Hiraku Suzuki

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個展「NEW CAVE」展示風景, 2008, トーキョーワンダーサイト渋谷(東京)Photo: Ooki Jingu © Hiraku Suzuki

ドローイングという行為を幹とした植物的な構造というか、それぞれの枝分かれした先っぽの部分を互いにエコーさせつつ、根っこを含めた全体が成長するように、制作を進めています。結構ゆっくりやっているつもりですが、新しい場所との出会いによって、突然変異的に新しい枝が生えることもあります。またそういった変化をぼんやりと求めてもいます。

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Right One, 2004, 壁画, Roda Sten(ゴッテンブルグ、スウェーデン)Photo: Christoffer Holmstrom © Hiraku Suzuki

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ZBR, 2004, 壁画, Uplink Gallery(東京)Photo: Ooki Jingu © Hiraku Suzuki

例えば壁画の仕事は、スウェーデンのグループ展の時に、会場の2つの大きな壁に触発されて、始めました。今でも壁画を描く時にはその場所の細かい凹凸や、天井や床の配管、周囲の環境などで引っかかった些細なポイントから入り込んで、道具を選び、掘り進むように描くことが多いです。壁画にかんしては、取って付けたようなものではなく、元々その場所にあったかもしれない、というようなものになればいいと思ってやっています。それはつまり、「今ここ」という現実のポイントが別の時空間へとひずんでいくような、時間的で虚構的なトリップです。

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