FITC ソウル 2008

HAPPENINGText: Yurie Hatano

FITC ソウル 2008

オランダのフラッシュ/フレックスのエキスパートであり「Papervision3D」コアメンバーの一人、ラルフ・ハウワートもまた、デザイナーではなくコーダーであると自らを主張し、コードフラッシュによるリアルタイム・エフェクトを用いた驚くべき3D技術作品の紹介で観客の度肝を抜く。彼が焦点をあてて実験を繰り返す光のフィルター効果も、印象的で美しいプロジェクトの一つだった。

FITC ソウル 2008

夕方に差し掛かり、色濃く刺激的な情報の渦に観客の集中力もぎりぎりになってきた頃、ジョシュア・デイビスの登場だ。ストリートアートから、ペインティング、そして先のエリック・ナッケと共通するコードフラッシュの自動生成によるアート、それによるプロダクトデザインなど、自身が表現媒体だと言うジョシュアは、作品の制作というよりも、その様々な発信の仕方によって魅せた。観客の状態に合わせて息を切らすほどに体を張りながら、過去のワークショップからエピソードなどを面白おかしく語る。アムステルダムのマクサロット・ギャラリーで行われた初個展についても紹介し、また『アワードや評価のためでなく愛のために作品をつくること、声を聞くこと、死ぬほど働くこと』と呼びかけて締めくくった。

FITC ソウル 2008

最後は、真っ暗なステージの中央に立ち、シェイクスピアの引用で劇的にプレゼンテーションを始めたカイル・クーパー。彼は150以上もの映画のタイトルシーケンスを監督、制作してきたモーション・グラフィック・デザイナーであり、有名な代表作品に映画「セブン」「ミッション・インポッシブル」「スパイダーマン」などがある。照明を落として刺激的な作品が次々と上映されると、会場からは拍手が沸き起こった。

FITC ソウル 2008

どのような最先端技術について語られようと、全てのクリエイターから発信される創作における様々な提案は、何にも共通する原点に立ち返った策であった。また、プレゼンテーションの方法もそれぞれに全く違って素晴らしく、それぞれが各クリエイターの作品テイストと完全に一致していたのが興味深い。この後ラウンジバー「ソウルサム」を会場にしたアフターパーティでは、翻訳者を通じて直接的なクリエイターとの交流も行われた。

2002年よりハリウッドや、アムステルダムなどで開催されてきているFITCの創立者によれば、このイベントを成功に導いてきた最初のステップが、開催都市の選択であると言う。いかにしてインタラクティブアートへのパッションが感じられる都市であるか。今年初めてアジアへの拡大にソウルが選ばれた理由は、観客はもちろんのこと、沢山の現地ボランティアスタッフ、会場にあった全てのパワーに見て取れた気がする。この成功を経て、2009年の開催も予定されているFITCソウル。この都市におけるイベントの行方が楽しみであり、このパッションから生まれる新しいデザイナーやディベロッパーの出現が待ち遠しい。

FITC Seoul 2008
会期:2008年10月14日
会場:COEX, Auditorium
住所:Samseong-dong, Gangnam-gu, Seoul 135-731, Korea
TEL:+82-2-6000-1125
https://www.fitcseoul.com

Text: Yurie Hatano
Photos: Yurie Hatano

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