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エリック・シウ

PEOPLEText: Josephine Sze Chan

インスピレーションはどこから湧いてくるのですか?

基本的に日常生活かな。アイディアが頭をコンコンとノックして、自分が日頃から目にしているものをくっつけたりするのです。時には、書物からだったり、地下鉄で見た人の顔だったり、どっかの殴り書きであったり、学習したことのあるセオリーだったり。それを練り直して、新しいコンセプトに仕上げるのです。ハマっているときなどは、精神的に、体がパーツごとに分離して、それを自分の心とそれぞれ結合していくような感じになります。思うに、人間の反応や相互作用というものを発散するのが僕のアートの一部だし、それを探求していくのが好きなんです。

なぜアメリカでキャリアを続けようと思ったのですか?これからの計画を教えてください。

ここアメリカのアートシーンはとてつもなく大きいし、展示スペースも膨大です。つまりは、膨大な数のアート作品に触れる機会があるということなのです。それに、多様な文化で育った人々がどんな反応を示すのかを見てみたかった。東洋の国からやってきた僕にとって、アメリカの文化、コミュニケーション、考え方など全てが、インスピレーションの源にもなります。それが自分の作品に取り入れられるのがとっても楽しみです。

エリック・シウ

香港のメディアアートや、アート業界についてはどう思いますか?

アーティストとして独り立ちするということは非常にタフでなければならないと思います。まず、観客の数は少ないし、設備も充実していない。アートに対する認識もまだまだこれからでしょう。つまり、教育がとっても重要になってくるということです。人々にいろんなアートを見せて、どこが面白いのかを知ってもらうなど。でも、香港ではパブリックアートは大歓迎だから、可能性は持っていると思います。新しい形として、広告、フィルム、映画、エンターテイメント業界へと拡がっていくことはできるでしょう。その中のいくつかは、すでに動いています。

東洋文化の中で育ったことは、あなたのアートにはどんな影響がありましたか?

都市の構造がとっても影響していますね。この小さくて混雑した街にいて、常に何かがそこら中で起きている状況下で、多すぎる情報の中から、大事なものはこれだって見極められる能力が付いた。香港は、多種多様な文化を持つ、極めて完璧な媒介都市です。僕は、全く無関係な状況、事柄を自分の創造力でくっつけていくのが好きなんです。こうしたしっかりとした考え方は、このような都市でしか培えないものだと思う。僕のアイディアは複雑なかたまりの中で理路整然とされて、特別な意味に焦点を当てて、新しい選択肢を導き出すのです。

アジアの若いアーティストが増えてきていますが、何かアドバイスをお願いします。

僕が思うに、アーティストにとって最も難しいのは、本質を見失わないということ。特に初期段階で。アートはすぐに結果が目に見えるものではないから、現実的であることがいつでも良い方向に進むとは限らない。経済的な理由から、才能があったのに諦める人を見ると、とても悔しくなります。でもこれは良くあることなんです。香港は奇妙な土地柄ですね。アートが非常に過小評価されて、世間から疎んじられていくし、そういう社会というのは、アーティストが生きる場所を狭めていくことにもなる。僕が若いアーティストに言いたいのは、アートを創造する情熱と興味を持ち続ける限り、とにかく続けろ!ということです。過程はとてもタフだけど、もし途中で投げ出したら、自ら才能を投げ出すことにもなるのだから。

彼のスタジオでインタビューした後、この現実世界でアーティストとして成功するのに必要なのは、自分の信念と強力な精神を信じていくことなのだと思いを巡らせた。それは、アーティストとして生き残るためのサバイバルキットなのだろう。それ故に、ギャラリーの作品を見に行くことは、宝を発見するということに似ている。

Text: Josephine Sze Chan
Translation: Kazunari Hongo
Photos: Courtesy of Eric Siu

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