アート・バーゼル 2008
HAPPENINGText: Kana Sunayama
ヘリー・ナマッド・ギャラリーは圧巻ミロの作品を18点展示し、アルミン・レッシュ・ギャラリーは様々なアーティストによる金属でつくられた作品のみを紹介するブースをつくった。
世界中にいくつコンテンポラリーアートフェアがあろうとも、アート・バーゼルがナンバー1であるのと同様に、世界中にいくつギャラリーがあろうともそのナンバー1は、やはりガゴシアン・ギャラリーだ。
ブース作りのために建築家でも雇っているのだろうか、このギャラリーは。限られたスペースのなかでの、計算され尽くされた空間のひろがり。作品を目の前にしたときの、作品と鑑賞者の完璧なディスタンス。弧を描くように作られた壁はブース内のどこにいようとも、私たちの視界を広げていく。おおげさに聞こえるかもしれないが、まるでそこは世界一値段のはるアーティストたちの作品が漂う小宇宙のようであった。これがガゴシアンの世界なのだ。
ため息が出る美しさを醸し出していたブースがあった。それは杉本博司の、静謐で見るものを別の世界へと連れて行ってくれるような写真と彫刻の作品と共に、束芋の素晴らしいドローイングインスタレーションを展示、その気品と格調の高さを会場にしっかり漂わせたギャラリー小柳。
そして特筆すべきは女性ギャラリスト、バーバラ・グラッドストーンの自信。それはもうブース自体が作品であるかのようだった。限られた面積のブースをいかに有効に利用して壁をつくり、少しでも多くの作品を雑多にならずに展示するのか、に頭を悩める多くのギャラリーとは正反対に、彼女は大きな壁ひとつに、ひとつだけの作品を掲げる。比較的大きめのブースにも関わらず、展示されていた作品は10点にも及ばない。なかには真っ白のままで残されている驚愕の壁まであったのだ。
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