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榎 忠

PEOPLEText: Kazumi Oiwa

その半刈り姿も言葉には表せれない作品ですが、その他の作品も言葉にはできない気がします。実際、設営作業を見させていただいて、作品も見て、これをなんと表現したら良いのだろうと迷いました。

うん、今日見てもらって分かったと思うけど、言葉では伝えられないよね。美意識とか美って何かなんて。やらなわからんと思う。ただ、僕にどれくらいの美意識があるのか、僕に潜んでいるものを引っ張りだしたい。美っていうのは形にあるもんでもないし、作りあげていくものやから。僕にどれくらいの優しさがあって、強さや弱さ、悪魔的な要素があるのかを伝えていきたい。だから言葉では表せられない。

榎忠
榎忠「AK47 / AR-15」 (部分)

なぜマシンガンや銃に着目したのですか?

殺人兵器って人間が考えたものやん。でもそれを扱うのも人間。人間って凄いんやけど、もの凄く怖いし、愚かやし。欲だらけだし。今日も世界では何万と人が死んでいるかもしれない。だから作品のような表面的に見立てて、反戦とか、戦争は賛美なのか?とかそんな問題では無くあんなん作りだす人間の根底にある恐ろしさ、怖さ、欲いうもんに対しての凶悪的なものを表現してみたかった。

僕は絵を描いたりするのも好きだけど、それじゃ満足できないねん。どこまで自分に力があるのかを試したい。それが作品、使う部品に繋がっているのかもな。まあ実際、小さい頃から家の近くに、軍隊が訓練をする場所があって、何かと接していたんよ。僕も戦争ごっことかいっぱいしていてね、銃を持ちたかったんやけど、子供やから竹で銃を作ってね、遊んでいたけどすぐ割れてしまうやん。だから大人になって、早く割れない銃で遊びたかった。その思いが未だに引きずられているんよ!

いつ頃から銃の作品を作られていたのですか?

最初に作ったのは1971年やったかな。そん時「一家に一台大砲を」「我が家の防災対策」言うてな!
そんで72年に発表して。その時代は浅間山荘の銃撃戦とかがあってな、僕は大阪で大砲ぶっ放したりして!保安官に狙われたりしてな。

身の危険は感じなかったですか?

ううん!僕悪いことしてないもん!笑

部品を一個一個積み重ねて作ってましたが、同じものは絶対にできないですよね。

そう、空間の高さ広さの問題もあるけど、こだわらずにやってんねん。その時の僕の気持ちで作品は成り立ってる。だから同じものはできない。そこらへん自由なのよ。あんまりこうせな、ああせなと決めてない。全てその場の雰囲気。だからこのインタビューの後も作業が変わるかもな!積み木みたいに作っているから、地震がきたらガーっ崩れるやろうし。

榎忠
榎忠「RPM-1200」 Photo: Yoshisato Komaki

では、あの近未来都市のような作品は、そうしようと思って作ったわけではなく積み上げっていったらあの作品になったということですか?

最初あれは、ミサイル工場とかプラントをイメージして作り上げっていった。機械的な感じ。配線とかパイプとかなんやわからんけどズラーっていうイメージでな。その場所が日本なのか、海外なのか、または地下なんかわからない。よその国か宇宙なのか。放つほうなのか、もしかしたら攻撃するほうなのかわからない。そーいうのを想像していったらあの作品になった。

では設計図というのは無いのですね?

うん、ないね。全て僕の気持ちでできているから。お客さんが作品を見に来て、触ったりするやん、そしたら時々崩れたりしてな、お客さんがビックリして元に戻そうとすんねん。でも、他の人から見たら分からんのやけど、僕には誰か違う人が積んだなと一発で分かる。僕の積み方とはちゃうねん。設計図を欲しがる人もいるけど、無いしね。誰にもあれは積めないよね。

榎忠
榎忠「RPM-1200」 (部分) Photo: Yoshisato Komaki

部品は廃材が主と伺ったのですが。

30年近く付き合いのある工場に行って、そこに捨てられ、集まってくる金属を使っている。あの廃材は僕が作品に使わなきゃ、熔かされてまた新しい鉄になってしまうんやけど、それまで職人が作って、何かに使われて、巡り巡って一仕事終わったもので、それを僕が想像しながら一つ一つ選んでいる。あんなん買ってたら何十万とかするしな!そして僕は鉄が好きやねん。ステンレスとかアルミって何回使っても綺麗なままやけど、鉄は錆びたり、腐ったりするやろ。それが何か人間に近い感じがして好き。ステンレスとかは性に合わないねん。あとは金属の音とかにおいが好きで、ゾクゾクするね。

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