人身売買撲滅のためのウィーン・フォーラム

HAPPENINGText: Christina Merl

少女アドリアナは13歳の時、メキシコシティで人身売買者に誘拐された。彼女の17歳の兄、ジョージは死にものぐるいで、彼女を救うため故郷を発つ。人身売買によって巨額の金を稼ぐ犯罪者の国際的ネットワークに捕えられ、苦難の時を迎えたアドリアナの唯一の友は、同じ組織に誘拐されたポーランド人の少女ベロニカだった。ジョージは、妹を誘拐した犯人を追うため、想像を絶する困難を乗り越えながらテキサスの刑事レイに出会う。レイは自らの家族を失っており、その事がきっかけでジョージの味方となる。メキシコシティの居住区や、リオグランデの危険な国境、インターネット上で行われる闇の売春オークション、そしてニュージャージー郊外のアジトでの緊迫した対決に至るまで、レイとジョージは協力し、アドリアナを奪った犯人に必死で迫ってゆく。彼女が売られ、決して戻ることのできない残虐な闇の世界に消えてしまう前に…。

オーストリアの日刊紙ヴィエナーツァイトゥングで報告された国連の推計によれば、127カ国からおよそ2.5億人の犠牲者が、強制労働、性的搾取、臓器売買、強制結婚、養子縁組、乞食などの目的で137カ国に売られているという。

人身売買撲滅のためのウィーン・フォーラム
From The Journey © UN.GIFT/Mario Romulic

この3日間のフォーラムのもうひとつのハイライトは、イギリス人女優、エマ・トンプソンによる展示作品であった。「ジャーニー」は、性的人身売買の犠牲となった女性の体験を再現してみせるもので、人身売買の恐怖を如実に表現し、既にロンドンのトラファルガー広場で展示されたものだ。ロンドンでの展示と同じように、アルベルティーナ美術館の目の前に錆び付いた輸送用コンテナが設置された。

このウィーンで最初の地区の、華々しく厳かな雰囲気の中にあって、それはとりわけ安っぽく、みすぼらしく見えた。しかしそれこそがこの作品のポイントであり、会場ではこの展示の中を歩いてみようとする熱心な来場者が長蛇の列をなした。それぞれのコンテナは、アニシュ・カプーアから、アカデミー賞受賞の衣裳デザイナー、サンディ・パウエルまで、ひとつひとつが異なったアーティストによって制作されている。コンテナを出てくる来場者たちは顔面蒼白で震えていた。

『身売りされた女性の寝室。誰もいないその寝室の光景が頭から離れない。汚なく乱れたベッド、コンドームがいっぱいに入ったボウル、ベッドの下からはみ出しそうな使用済みのコンドーム、そしてあのひどい臭い。』
展示を観に行った私の友人はそう話した。

The Vienna Forum to fight Human Trafficking
会期:2008年2月13日〜15日
会場:Gartenbaukino
住所:12 Parkring, 1010 Vienna
https://ungift.org

Text: Christina Merl
Translation: Shiori Saito
Photos: Courtesy of © UN.GIFT

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