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パリ・ファッション・ウィーク 2008

HAPPENINGText: Arisa Kobayashi

ショーの終わりに、粋なちゃきちゃきの江戸っ子みたいに日本の消防服を着こなして、てゃんでぃとばかりに出て来たベルンハルト・ウィルヘルム。それはゴシック要素がたっぷりでありながら、どこか日本の匂いを感じられずにはいられないショーだった。

パリ・ファッション・ウィーク 2008パリ・ファッション・ウィーク 2008
TOTEM

幼い頃に親の陰に隠れて怖がりながら見た節分の鬼のダンスを、あの時にカムバックして見ている気分。会場を円で囲んで座ったなら、あの時と同じく上にはタロイモやドリアンがついた棒を持って、猫顔のゴブリン達がゆっくりとこちらへ歩いてくる。セーラーの襟みたいに黒のドレスの淵を赤のラインが走り、どこかの野球球団のユニホームと間違えそうな黒と黄色のストライプのつなぎ。黒と白それに赤黄青を加えてストライプを作り出したなら、モデル達が木の間をすり抜けて棒で地面を二回叩いて、あなたの目を上下左右に動かすように歩き回る。「I CANNOT HEAR YOU, I CANNOT HEAR YOU」、そんな頭にいつまでもリンクして離れないミュージックは今までのファッションショーの常識に耳をふさぎ新たなショーを見せてくれた、ベルンハルト・ウィルヘルムのメッセージにも受けて取れた。

パリ・ファッション・ウィーク 2008パリ・ファッション・ウィーク 2008
TSUMORI CHISATO

大好きな彼女の服に身を包み、その手に持つバッグのポルカドットの一つのように、どこも咎める所のない穏やかな喧嘩をする事をしらないような女の子が、セキュリティーの前に並んでいて、天と地くらいに違うのでおかしくなってしまう。お人形さんの形をしたインビテーションに息を吹き込んで引き連れて行かなきゃ入れないのよ、そんな風にどこまでもかわいさに満ち溢れる彼女のショーでは、パンフレットが見当たらないと思ったら、キャットウォークのシートの下に隠されていて、取られた瞬間にメッカのお祈りのように前のめりになって見つめた先には「LOVE, OH I AM TALKING ABOUT WHAT? AITO KIBOU OMOSHIROI I LOVE ME…」と書いてあった。クラッシックと軽快なリズムがリミックスされた、ポップでありながら壮大なミュージックとともにアーチの中から出て来たのは、ルーブルに来たのに時間がなくてできなかった美術館巡りを可能にしてくれるような美しい空を描いた、そしてブラシの荒々しさまでもが伝わってくる歩く絵画。そしてなんといっても、オーロラのようなグラデーションタイツが悲しみを取り除いてくれる。最後に黒髪を靡かせながらひょこりと顔を出した彼女が誰だか言わなくてももう分かるでしょう?「I LOVE ME, TSUMORI CHISATO

パリ・ファッション・ウィーク 2008パリ・ファッション・ウィーク 2008
Alena Akhmadullina

最後を締めくくるのに相応しかったのは、毎シーズン一風変わったスタイルを提案してくれるロシアからやって来たアレナ・アフマドゥリーナのショー。今シーズン、キャットウォークを歩くのはモデルではなくニワトリ!?羽が全身にプリントされたドレスに、とさかの髪飾り。チキンの着ぐるみを着て歩いているような、肩がふっくらした今にも飛んでいってしまいそうなそのものの圧巻の毛皮のコート、腰をリボンのベルトで巻いたなら地面へ向かって垂れ下り、残りの部分だってニワトリの足に。そしてシューズだってニワトリ歩きを可能にしてくれる。それでいてちっとも馬鹿げていないのだ。フェロモンさえ感じる。今年の冬はニワトリになってみない?

冬が待ちきれない。そして次のファッションショーも待ちきれない。

Paris Fashion Week 2008
日程:2008年2月23日〜3月2日
会場:パリ市内
https://www.modeaparis.com

Text: Arisa Kobayashi
Photos: Courtesy of Paris Fashion Week

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