リヨン・ビエンナーレ 2007

HAPPENINGText: Kana Sunayama

ネガティブな批評ばかりを耳にした今回のリヨンビエンナーレ。現代アートの持つ「わけがわからない」「インテリすぎる」部分ばかりが目立つものであった。アートの放つ「美しさ」によって評価された作品があったか、と記憶を辿ると、ランジャニ・シェターやケレン・カッター、マイ・チュー・ペレぐらいだろうか。若手キュレーターの奢りを観客が感じた理由のひとつには、コンセプトをどこまでも追求した作品ばかりが集められたこともあるだろう。それが、絵画作品が一枚として展示されていない理由にもなるのだろうか。しかしこの10年間の絵画作品の位置は、アート市場においてもアート界においても非常に重要なものであるはずなのだ。

リヨンビエンナーレ 2007
Mai-Thu Perret, “An Evening of the Book”, 2007

しかしまた一方で特筆すべきは、彼ら二人が今までに培ったアドレス帳からのボーダーレスなゲーム参加者の選択である。パリのポンピドゥーセンターで1989年に開催された「大地の魔術師たち」展から約20年、アートのマルチカルチュアリズム化が提唱され、現代アートの中心である欧米以外に存在するアートを、同等の視点で見せようという運動において、非常に自然な形での一つの答えが出たとも言えるのではないだろうか。

「大地の魔術師」展でのチーフキュレーターであったジャン・ユベール・マルタンが2000年にリヨンビエンナーレで見せた 「エキゾティズムの共有」展、また世界中を巡回した「アフリカ・リミックス・多様化するアフリカの現代美術」展、そして昨年のヴェネツィア・ビエンナーレでのアフリカンパビリオン初参加など、現代アート界の中心で、その周辺地域のアートを見せる試みがなされた。しかしそれらは19世紀後半から20世紀前半にかけての万国博覧会のような感が残ったことは否めない。

今回のビエンナーレではそれがリヨンで開催されたこともフランスで開催されたことも重要ではないのだ。大都市ニューヨークの巨大現代美術館も、フランスのナント市にある小さなギャラリーも同等に扱われたように、世界の様々な場所から発信されているアートがその地理的重要性とはまったく関係なく展示された。そのことはウィキペディアの用法で世界各地からこの10年を定義するという研究に参加できるウェブサイト「ourdecade.com」の設立にも見られる(この企画は多くの参加者を持たなかったにしても。)

現代美術館という特定の場所でもなく、リヨンという街でもなく、フランスという国でもなく、ヨーロッパでもなく、またモワドンとオブリストによって選択されたキュレーターたちだけによるビエンナーレでもない、時が経つとともに、そんな果てしない広がりを感じることのできるビエンナーレであったとも言えるのではないだろうか。

The 9th Lyon Biennale
会期:2007年9月19日〜2008年1月6日
会場:La Sucrière, Villeurbanne Institute of Contemporary Art, Bullukian Foundation, Lyon Museum of Contemporary Art
http://www.biennale-de-lyon.org

Text: Kana Sunayama
Photos: Kana Sunayama

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