リヨン・ビエンナーレ 2007

HAPPENINGText: Kana Sunayama

そして第二のゲーム参加者はアーティスト、作家、振付師、建築家などの様々な分野のクリエイター14名から構成される。彼らに与えられたルールは「展覧会の一シークエンスによってこの10年間を定義すること。」

リヨンビエンナーレ 2007
Annie Vigier & Franck Apertet, “X-EVENT 2”

例えばリヨン現代美術館の3階フロアの大部分を利用して体験型アートを提供した、コンテンポラリーダンス振付師のジェローム・ベル。「The show must go on」を体験するにあたって、私たちはフランス歌謡曲、英語洋楽、子供用音楽の三つからひとつのヘッドフォンを選ぶ。そのヘッドフォンをつけて鏡の部屋や真っ暗な部屋、緑深い公園を見下ろすガラス張りの部屋などを巡る。部屋から部屋へと移動するたびに、ヘッドフォンから流れてくる音楽は変化し、それぞれの部屋で私たちが視覚的に捉えられるもののBGMとして機能する。

リヨンビエンナーレ 2007
Shilpa Gupta, “Untitled”, 2007,

また彼はリヨンビエンナーレ開催時期に合わせて同タイトルのダンスをリヨンオペラ座で発表した。この作品はピエール・バル=ブランが「最も重要なアーティスト」に選んだアン・ヴィジエ & フランク・アペルテや、シルパ・グプタの作品とともに、このビエンナーレで観客が楽しめる数少ないもののひとつだった。

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“Retrospective of Pierre Joseph”

サダーン・アフィフはフランスのナント市にあるギャラリー、ZOOギャラリーに所属するアーティストたちの展覧会を行い、またピエール・ジョセフは、近年フランスで活躍する30歳前後の若いアーティストたちに、自身の作品にオマージュを捧げる形での作品作りをさせ、「ピエール・ジョセフ回顧展」と称して展示した。

二人のキュレーターは、今回のビエンナーレを「数人によって書かれた歴史の本」として提示してきた。しかしその「数人」が参加したこの歴史作りゲーム。歴史の本のようにまとめられているはずが、非常につかみどころがない、混沌としすぎているものとなった。それがこの10年間の現代アートシーンであると彼ら二人は言いたかったのか。しかし現実には、そのカオスのなかで私たちはただただ途方にくれ、混乱してしまうばかりだ。

このビエンナーレに来た観客たちが見たものと言えば、モワドンとオブリストが、20歳代から世界の現代アートシーンで活躍し、まだ40歳になりたての若手キュレーターとしての人脈の広さを見せびらかしたアドレス帳であったと言えるのではないか。というような批判があるのもうなずける。

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