しずおか コンテンツ バレー・フェスティバル 2008

HAPPENINGText: Wakana Kawahito

「デザインの外側」というテーマで語った、アートレスの川上俊とプロジェクターの田中耕一郎。デザイナーとプロデューサーという、それぞれのもの作りのスタンスの違いが、良い対比を生み出していたトークセッションだった。川上は、セルフブランディングの重要性を解く。

『美大も出ていないし、正攻法が何かさえわからな かったからまず自分の作品を知ってもらう機会を増やさなければと考え、ウェブを作ったり展覧会をしたりしてました。やっていくうちにあの人があの人を紹介して…という感じで繋がりが生まれてきたんです』。年に一回は必ずセルフワークの展覧会を開くことを信条としている川上。『やっぱり、自分の作品を作り続けていないとクライアントワークにも繋がっていかないし、もうこれはライフワークですね。』という。

SCVF 2008
Koichiro Tanaka and Shun Kawakami

個人的なデザインを大切にする川上とは対照的に、いかに「ムーブメント」を起こせるのか… をテーマに「UNIQLOCK」や「UNIQLO JUMP」などのインタラクティブメディアを作り出している田中。これまで、YouTubeやFlickrなど、新しいウェブサービスを巧みに利用しながら大きなしかけを作ってきた。そんな彼のプレゼンテーションの仕方は独特だ。

『クライアントにはプレゼンしないんです。どうしてこの企画を思いついたのか、その経緯を説明するんです。例えば「UNIQLOCK」の場合、ユニクロが世界へ向けたメディアを作り、それを広めるのには、みんなが欲しくなるようなブログパーツがあればいいと考えて。そうすると時計はいいアイディアですよね?でもそれだけじゃ弱い。感覚的に惹きつけるものが必要だなと感じていたところに、ダンスと秒針のリズムがぴったりはまるのではないか?と思いついて…』といった感じだ。調理される前の生の状態の企画をクライアントと共有することでそこには「余白」が生まれる。その余白があることで企画はより柔軟に多くのアイディアを取り込めるものとなり強度を増す。

SCVF 2008
Phunk Studio

デザインロックスターとは、今シンガポールで一番イケテルデザイン集団ファンク・ストューディオのこと。『毎朝起きると、コンサートでバンドが演奏するように楽しみながら、観客とともに仕事をしたいと考えてる』と語るウィリアム・チャン。まるでバンドが演奏をしているかのようにデザインをすると言われる彼らはとにかくセルフプロモーションが上手い。自らをバンドにしたててキャラクターを作ったり、自分たちで出版した「UTOPIA」という作品集の中でデザインフィロソフィーを発表している。

中でも面白かったのが、彼らがアートスクールに招かれて講演した時、「STEAL This Poster」というイベント告知のポスターを制作したのだが、ポスター(絵)はスプレーで壁にトレースしたものだったという話。つまり、学生たちが自分たちのスタイルは盗めてもアイディアまでは盗めないという自信と、アイディアまで盗んで消化してしまうような力のある新しいデザイナーが生まれて欲しいというエールを込めたユーモアなのだ。粋である。

SCVF 2008

こんな濃いイベントが全て無料というのも嬉しい。『今年からCCCという場所ができたことで人々が集まれるプラットフォームができた。定期的にイベントや展示を行いたいです』とSCVの大森氏は語る。フロム・ジャパンからフロム・シズオカへ。静岡の挑戦はまだ始まったばかりだ。

次回のSCVFは、2008年10月31日〜11月3日に開催が予定されている。

しずおかコンテンツ バレーフェスティバル(SCVF)2008
会期:2008年2月15日〜17日
会場:CCC(静岡市クリエーター支援センター)
住所:静岡市葵区七間町15-1
https://www.scv.jp/scvf/

Text: Wakana Kawahito
Photos: Courtesy of Shizuoka Contents Valley Festival

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