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グッゲンハイム・アブダビ

PLACEText: Mamiko Kawakami

壁面など完全に仕上げない自然にこだわるデザイン。そして、この美術館の中心となる部分は、中庭となり、そこには彫刻などが展示される。その周りには、天井の高さや広さも様々なギャラリーが積み重ねられ、全4階に構成される。様々な大きさのギャラリーも、またデザインの進化に柔軟に対応することができるためにと、ゲーリーは設計している。その中心部を取り囲む部分はよりオープンなスペース。一番外側となる部分はさらに広いギャラリーとなる。また、この美術館へは、メインエントランスの他、船での入館ができ、また通路を通り外に出ると砂漠が目の前に広がるように設計されている。

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グッゲンハイム・アブダビのデザインは、独特の外観だけではない。その不思議なデザインには、環境との調和が綿密に計算されているのだ。円錐型の屋根無しデザインは、その中庭の空間から熱い空気を逃がす古くから伝わる仕組み。このアイディアがグッゲンハイム・アブダビを円錐を基本としたデザインに作り上げている。そして、斜めの煙突がいくつもそびえ立っている様なそのデザインは、この地域に昔から伝わるウィンドタワー(風の塔=アラビア語でバージール)の原理を利用した自然のクーラーシステムになっている。

アブダビの灼熱気候対策には他にもいろいろな工夫がなされている。中庭には、「ウォーター・ウォール」というその名の通り水の壁があり、そのスペースの大気を冷やす。その他にも、夜間換気システムによる熱気の調節、下降気流を利用した大気冷却システム、床下に水を使用した放射冷却システム、室内温度によって調節される換気システム、そして日中には蒸発冷却システムの利用が可能。

また、省エネ対策としては、自然光の有効活用と複雑照明の両用、断熱性に優れ太陽の熱を吸収できる素材の外壁を使用し、日陰となる部分の壁には通気口を開け、館内の熱を外に逃がす自然風による換気システムが設計されている。そして、自然エネルギーの利用は、風塔に風力タービン、屋根と壁部分に太陽光発電、廃棄物焼却熱利用、ガスを組み込んだ吸収冷却システム、太陽熱を利用した乾燥除湿システムなどの全てが設計に組み込まれている。その他にも、トイレ、掃除機などに水節約装置、施設内に造水、排水処理、半塩水システム、下水処理、廃棄物分別 システムが設計されている他、建材は耐久性の強いこの地域の物を使用する。

地球環境保護が強く問われる今、ゲーリーのこのデザインは自然との共存が可能な未来型美術館の完成型と言えるだろう。グッゲンハイム建設予定地は、美しい海岸沿いに照りつける太陽、そして砂漠を背景に持つ。『海の美しい青と砂漠、空、太陽の色で演出したい。』とAPのインタビューにゲーリーは語る。ただグッゲンハイムを西洋の文化としてただ輸入しこの地に置くのではなく、この中東の新アートシティーにグッゲンハイムの存在が意味を成すものにしたい、とアブダビの地域性との調和を大切にするゲーリーのコンセプトだ。

『今までの美術館では展示不可能だったアートを展示したい。』その思いから、でき上がった新デザインをゲーリーは次のようにも表現する、『建築を展示できる建築、それがグッゲンハイム・アブダビだ。』

Guggenheim Abu Dhabi
住所:Saadiyat Island, Abu Dhabi, UAE(2025年完成予定)
https://www.guggenheim.org

Text: Mamiko Kawakami

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