福井利佐

PEOPLEText: Wakana Kawahito

普段は平面な切り絵ですが、立体的なものに転記する時に気をつけていることは?

形をいかしてより有機的に見えるようにしています。例えば、スニーカーの場合、その流線型の形に沿わすために鯉のモチーフを選んだり、車のシートに模様をつけた時は、植物が生きている様子を再現するようにデザインしました。これは、助手席と運転席とバックとで全て模様が違うんですよ。人が座ってなかったり、外から覗いた時にも楽しいのが作りたかったんです。

福井利佐

どのような切り絵を目指しているのですか?

切り絵という平面で静的なものに動的なものを持ってくることに興味があります。切り絵は線が命ですが、オリジナルな線を描く時、有機的な線、生き生きとした線を描くことで私らしさがでるんです。力強さ、生命力が感じられる作品であるかということを一番重視していますね。

作品のインスピレーションはどこから受けますか?

動植物や人など生命をもったもの、また、煙などの動きがあるものに興味があります。その他、目に見えないけれども動きを想像させるもの、例えば、スペースシャワーTVの広告ではドラムから音楽が出ているという設定で音の流れる様子を切っています。

福井利佐

構図や色使いで参考にしているものがありますか?

芹沢銈介さんという型絵染めで知られる染色工芸家の方の作品は参考にしています。西洋の染色や沖縄の紅型の色使いを伝統工芸に取り込んでいて斬新なんです。実は、彼の作品を多く所蔵する個人美術館が実家の近くにあって、学生時代はよくそこに通っていました。地元が静岡なんですけれども、ひな人形などの工芸品が地場産業で、幼い頃から親しんでいたこともあり、伝統工芸品は好きですね。
芹沢さんとか民芸運動の父と言われている柳宗悦さんとか。民芸の方には学ぶところが多く、尊敬しています。

好きなアート作品やアーティストは?

ヤノベケンジさんのトラヤンとか大きくてわかりやすいものが好きですね。他には祭国強さんの作品とか。ダイナミックで単純明快に面白いところに惹かれますね。自分が小さくて細かいものをつくっている反動でしょうか? 

そういわれてみると、確かに作品もダイナミックさと繊細さの絶妙なバランスの上にありますよね。

性格は意外と男っぽいんです(笑)。切り絵は思い切りが大切だったりして。線を切る時は、うじうじ迷わずに、切っちゃえという気持ちでやっています(笑)

個展のご予定はありますか?

久しぶりに、来年の3月にやる予定なのですがとても楽しみです。今後も定期的に個展をやっていきたいですね。発注をいただいて取り組むお仕事はスパンが短いので、腰を据えて自分の作品を制作する時間ももっと増やしたいです。雑誌やCDなんかのお仕事だと紙に乗っている状態で露出するので、きちんと紙を切った現物も見て頂きたいですしね。

福井利佐 切り絵作品集「KI RI GA」
仕様:96ページ、24.8 x 18.2 cm
価格:3,045円(税込)
発売日:2007年11月
ISBN-10:4795835330
出版:情報センター出版局

Text: Wakana Kawahito

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