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琵琶湖ビエンナーレ 2007

HAPPENINGText: Yoshito Maeoka

BIWAKOビエンナーレ 2007
井上信太

一方で日牟礼八幡宮の参道にあるたねやの脇をはいったところにある旧吉田邸では、井上信太が古民家ひとつをまるまる、自分の展示会場に変容させていた。合板ベニヤにスプレーで描いた様々な動物達を、暗がりの中にライティングし解き放つ一方で、近江八幡の至る所に羊達を『放牧』した映像などを上映していた。様変わりした空間を、老若男女問わずそれを楽しんでいた。

BIWAKOビエンナーレ 2007
田中太賀志

BIWAKOビエンナーレ会期半ばにしてオープンした尾賀商店では、田中太賀志が炭のシャンデリアを、また三和土では津田直片桐功敦久住有生が緊張感のあるインスタレーションを展開していた。 酒蔵を改造したライブハウスでしられる酒游舘では、カフェスペースに北川健次の版画作品を展示。

BIWAKOビエンナーレ 2007
大舩真言

また酒游舘のオーナーである地酒の造り酒屋、西勝酒造のかつての搾り蔵を利用して、暗がりの中に巨大な絵画を展示する舞台として大舩真言が空間全てを演出していた。また旧市街の商店の軒先を覗くと、いくつかのショーウィンドウには、スプーンと楊枝を用いた作品を展開するアーティスト集団であるサージ+ヨージの作品が散見できた。

BIWAKOビエンナーレ 2007
ジャン・ピエール・テンシンのワークショップ

会期中、各週末にはワークショップやコンサートなども開かれた。 ワークショップは個性豊かなものが粒ぞろいだった。西田明夫による針金をつかったおもちゃ作りや、小板橋慶子によるフェルト作りのワークショップなど工作教室というニュアンスの強いものから、プレ企画として実施されたジャン・ピエール・テンシンおよびオープン・ザ・セサミのアニメ共同制作のワークショップ、ティルト・クンチョノ によるガムランの演奏体験、松尾郁子とポンピドゥセンター教育担当学芸員のエリザベス・オジェによる作家性の強いワークショップまであった。

BIWAKOビエンナーレ 2007
ワラビモチ歌会

その他参加型イベントとしては、PHIRIP+北夙川不可止によるワラビモチ歌会、サージ+ヨージによる句会および、利き酒大会、そしてお匙でお酒を飲むさじBARとバラエティ豊かなアーティストの個性に見合った内容がそろい、幅広い層にアピールした。 また幾つか実施された、コンサートも興味深かった。

BIWAKOビエンナーレ 2007
大古代水神詔

元ダムタイプのメンバー山中透、現メンバーのマミームゥと前田英一、kyupi kyupiの江村耕市がコラボレートした『大古代水神詔』では、作品の設置された喜多利邸中庭で実施され、幻妖的な風景の中、江村の映像が障子の格子に投影され、山中のエレクトリック・サウンドを背景に前田英一が踊り、マミームゥのチャタリングの様なヴォイスパフォーマンスとテルミンの演奏が行われた。

BIWAKOビエンナーレ 2007
イーサー

オーストラリアから来たパフォーマンス・カンパニー、イーサーも琵琶湖ビエンナーレ最終日である11月18日に、西勝酒造新蔵で幻想的なパフォーマンスを行った。多文化国家であるオーストラリアという土壌が、自国だけでなくマレーシア、日本と環太平洋的な文化背景をもって展開していたこのグループのメンバー構成、パフォーマンスの内容に大きく影響していることが伺い知れる。

このように会期50日、残暑から初冬まで季節の移ろう中、おおよそ40組のアーティストが様々な展示やイベントを展開していた。比較的古い時代のものが残る中、注がれた新たな視点が交錯するという、現代日本に於いて類い稀な展覧会だったと言えるのではないだろうか。今後も注目すべき試みの様に思える。

琵琶湖ビエンナーレ2007
会期:2007年9月30日〜11月18日
会場:滋賀県近江八幡市旧市街地
https://www.energyfield.org

Text: Yoshito Maeoka
Photos: Yoshito Maeoka, Yuto Hirakakiuchi

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