地下展:空想と科学がもたらす闇の冒険

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

18のセクションからなる地下展は、深度に応じた様々な事象を紹介している。地下施設や資源について、また地下に存在する生物について現代科学が解き明かしている最深部の模様などが、見ていて楽しい展示方法で紹介されている。

地下展 UNDERGROUND

例えば東京の地下に広がる「大深度地下」にある「共同溝」とよばれる巨大地下通路。そこには、現代社会に生きる人々のライフラインを支える、水道、電気、通信が張り巡らされており、見えないところで我々の生活を支えている。人々に生活圏は上へ上へとそびえたつ高層ビルのみならず、地下へも可能性を見出しているのだ。

地下展 UNDERGROUND

また、地下は地球の中で比較的安定した環境であるという。そういった特性を利用した様々な試みが世界では行われている。ノルウェーにあるスバルバル島では永久凍土に覆われた地下に世界中の食物種子を保存するプロジェクトが行われている。スケールもさることながら、その “ノアの方舟プロジェクト” という名前を聞いただけでもうSFの世界だが、まぎれもなく現実なのだ。日本でも地下を利用した保存が行われており、1970年の大阪万博の時にタイムカプセルが作られ地下に保存されている。5千年後に開封されるそうだ。悠久の時間を感じるプロジェクトだ。

地下展 UNDERGROUND

生命の起源についても、海水中で生命が発生したという説があるが、これとは別に、実は地下を形成する粘土鉱物が生命の素となる分子を結びつける役割を果たしたのではないかとする説も、この展示では知ることができる。

地下展 UNDERGROUND

当たり前すぎて気にも留めずに歩いている地面の下で、世界規模の営みが行われており、現在温暖化の危機が叫ばれる地球環境についても、宇宙から見下ろした景色とは別に地下から見上げてみると、全く別の地球像が浮かび、視点を変ることによって生まれる可能性を地下展は提示している。

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