第52回 ヴェネツィア・ビエンナーレ

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アルセナーレは L字型の建物であり、その長く長くどこまでも続く暗い回廊のようなプランを上手に利用するのが、キュレーションとともにディレクターの腕の見せ所でもあるのだが、今回のロバート・ストーのセノグラフィーは、アーティスト別に展示場を細かくぶつ切りにしたような使い方であった。それでも、ぶつ切りにされた各アーティストの作品たちの余韻からテーマがうっすらと見えてくる。しかしそれは「アルセナーレではこの作品があった!!!」とビジターである私たちに強い印象を残す作品の欠如が原因であるとも言えるかもしれない。すべての作品たちが軽い余韻を残すものでしかない場合、ぶつ切りにされた展示場だからこそ「アーティスト(作品)対自分」という状況にたつことを余儀なくされ、そこで静かに受け止め感じることが要求される。もしも水が流れていくように鑑賞できる展示構成であった場合、すべての作品と対峙することなく観客は通り過ぎていくという結果に陥っていたのかもしれない。


第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ
Jason Rhoades. Tijuanatanjierchandelier, 2006. Installation view.
Photo: Giorgio Zucchiatti. Courtesy: Fondazione La Biennale di Venezia

そんな構成のなかでも、入り口を入った途端に包まれるルカ・ブヴォーリ、回廊の中ほどにあたる部分に位置するジェイソン・ローデス、3分の2以上の作品を観賞し、すこし疲れてきたころに私たちの目の前に急に現れる床から天井までを覆うエル・アナツイによるアルミニウム缶の蓋でできたカーテン、などは全体的に中だるみを感じたアルセナーレでの展示において良いアクセントになっていた。

第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ
Philippe Parreno. Speech bubbles (black), 2007

そしてアルセナーレの最後に展示されているのは、フィリップ・パレーノの「Speech bubbles (black)」というタイトルの大量の黒いゴミ袋を風船のように膨らましたインスタレーション作品。私たち人類が吐き出す廃棄物を内包し、見えなくさせるはずの黒いゴミ袋が、私たちの眼に見えないところまで飛び去ってしまうのではなく天井につっかえて溜まり、微動だにしないままになっている。そんなゴミ袋が溜まった天井を見上げる私たち。そしてまたこの作品が現代の先進国の大量消費社会と高級品崇拝主義の象徴とも言える「LVMH」(ルイ・ヴィトン&モエ・エ・シャンドン)財団の所蔵品であることも皮肉なものである。

第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ
Check List Luanda Pop, Africain Pavillon © La Biennale di Venezia 2007

以上、ロバート・ストーによるキュレーションが行われたビエンナーレ二大会場を紹介したが、常にどこかに文化系インテリ層に属するアメリカ人の現代社会批判によくあるような偽善的な部分が見え隠れしていた。また、アルセナーレの回廊展示が終了したことを実感しないまま、今年初めて企画されたアフリカン・パビリオンの展示に囲まれる。ロバート・ストーが主張したアフリカン・パビリオンの企画であるが、この展示も結局は現代美術収集家、シンディカ・ドコロのコレクションからのものであり、そこにも、どこまでも切り離すことのできないアート市場とヴェネツィア・ビエンナーレの関係や、欧米中心主義のアート界のあり方を垣間見たように思う。

第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ
会期:2007年6月10日〜11月21日
会場:アルセナーレ、ジャルディーニ他、ヴェネツィア市内

Text and photos: Kana Sunayama

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