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フィリップ・トレーシー

PEOPLEText: Waiming

どういったものからですか?

美しいものかな。アイルランドの実家ではいつも自然界の美しさについての話を聞かされていたよ。沢山の鶏、キジ、ガチョウに恵まれていたから、帽子作りの原点の素材は自分の知り尽くした羽。少年時代の自分への深い影響には今ではとても感謝しているよ。

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ヘッドアクセサリーは必需品ではありませんが、ファッションとの関係についてどう考えますか?

帽子はとっても魅力的だよ。王立美術大学で始めた頃は、帽子は年齢を重ねた婦人のためという風潮があったけど、それは全くおかしいと思っていたんだ。どうしてそうなるの?来週になにが起こるか分からないといった、未知で未来といったアイディアが好き。そしてそれがファッションの心構だと思う。誰かを「ファッション・ジャンキー」だと非難するのもまったくかまわない。自分もその一人だよ。ファッション・ジャンキーは短い期間だけ何かに夢中になって、また次の他の何かへと関心が移っていく。それがファッション界の自然だよ。全ては移り変わり。

いつか自分の創造力がなくなってしまうのではないかと恐れに感じることがありますか?もしその日がきたら、どうしますか?

私はまずクライアントと彼らの個性を見つめて、それについて考える。目標はその人にとってかけがえのないものにすること。それはなぜ人が服を身につけるのかっていうことにもつながってくるよ。自分をよく見せること。必要としてくれるひとがいる限り、美しい帽子を作り続けていくつもり。店で働いているアシスタントは自分は夢を売っていると話すんだ。なくてはならないわけではないけれど、あるべきもの。人は自分を和ませて楽しませてくれる、美しいものを必要としている。それは花かもしれないし、夕陽や、そして帽子かもしれない。生活のスパイスとして快楽や美の本質を思い起こさせてくれるもの。21世紀の帽子がどうあるべきかということを体して、挑戦し続ける機会与えてもらえてとても光栄に思っているよ。

休日はどう過ごしていますか?

このファッションの世界で仕事をすると、生活の全てを取り込まれるから、そういった遊ぶ時間はないんだ。

この業界を志す人へのメッセージをお願いします。

生まれ育った環境から逃げ去りたいと思っても、心の中にあるものからは逃げるとこはできない。まるで自分がローマ出身のようにいつも話すんだ。ロンドン、パリ、ミラノ、ニューヨークとファッションショーに参加してきたけれど、(生まれ故郷の)アハスクラでの小さな結婚式が一番自分の心を揺り動かしたよ。ファッションは人間らしさ。業界の人達は完璧主義を追い求め、とても変わり者だけど、人生というのはそうでない。私のアイリッシュらしさが教えてくれて者、それが人間らしさだったんだ。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

帽子はその人の洋服の性格を変化させて、立ち方や歩き方まで変えてしまうもの。帽子はその人を楽しませてくれるもの。帽子を身に付けている人を見せびらかたがっていると非難するひともいるけれど、人間は本質的に自分自身を美しく飾りたがるもの。だから帽子は西暦1年から身近な存在としてあったんだと思うし、体中を飾るというのも人間らしさだと思う。

Text: Waiming
Translation: Yoshitaka Futakawa
Photos: Courtesy of Philip Treacy

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