ドクメンタ 12
HAPPENINGText: Yoshito Maeoka
アウェ・パヴィリオンは今回のドクメンタの為にオランジェリーの前の草原に特設された、今展覧会最大級の会場となる。遠くからみた所、温室に見えるにも関わらず送風機による空調が完備している為、中は適度に涼しかった。
Aue Pavillion
会場に入ってまず目につくのがリカルド・バスバウムのインスタレーションだった。
Ricardo Basbaum, Would you like to participate in an artistic experience?, 1994-2007
『Would you like to participate in an artistic experience?(あなたもアーティスティックな体験に参加しませんか?)』というプロジェクトのコラボレーションの結果として展示されている。
Monika Baer, Vampir(1), 2007
印象的だったのは最近のドイツの若手作家による絵画作品が集中してここに見られたことだった。モニカ・バエルは「Vampir(1)」という幻想的で近作を展示していた。ディールク・シュミットは絵画的アプローチによる実験を経た後、社会問題をモチーフに作品制作を進めている作家で、この展覧会ではドイツがビスマルクの時代にアフリカを植民地化していたテーマとして取り上げているが、プレゼンテーションの結果として現れる抽象絵画のようなアプローチが印象的だった。
Charlotte Posenenske, Square Tubes, 1967-2007
この会場の空間的特性を生かした作品も目を引いた。無造作に置かれた空気孔は一見すると建物の一部として機能させる為設置されていたかの様に見えたが、日常生活の一部を切り取り、作品として再構築する、シャルロッテ・ポセンスキの作品だった。
比較的余裕のある空間を最大限利用した、13本のギターによる音像が立体的に聞こえてくるサーダネ・アフィフのインスタレーションも印象的だった。
Johanna Billing, This is How We Walk on the Moon, 2007
この作品を後に会場をさらに先に進むと、心地の良いギターの音が聞こえてきた。ヨハンナ・ビリングの映像作品だった。80年代ニューヨークを拠点に活動していたアーサー・ラッセルの曲をバックにエジンバラのミュージシャンらを招いて一同船を動かして海に出るというリリカルでドラマチックな映像だった。
Mladen Stilinovic, Exploitation of the Dead 1984–90, 2007
その他、この会場で個人的にとも気になる作品を挙げるとすればムラデン・スティリノヴィッチのコンテナに設置されたインスタレーションだろうか。コンテナの壁には死を想起させる、ペインティング、ドローイング、オブジェが展示されていた。そのオブジェの中には、ドイツの町中であればどこでも買えるであろう切り売りのケーキもあった。聞いた所によると、それらのケーキは展覧会中取り替えられる事が無いという。この作品が会期中どういう遷移を辿るのか、そのプロセスにとても興味を引かれた。
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