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高木正勝

PEOPLEText: Yasuharu Motomiya

ライブ演奏には演奏家個々人の裁量で行える即興的な要素ははいっていますか?

弦楽器の4人は、楽譜がないとバラバラになってしまうので、大体の曲で決められた通りに演奏してもらいました。後の方は、最低限のメロディーや歌詞、コード進行などを保ってもらう程度で、好きに演奏してもらいました。簡単な構成の曲が多いので、比較的、自由にやってもらえたと思います。でも、いくら楽譜を用意したり決めごとを設定しても、実際に演奏すると全ての要素が「即興」になるものなんですけれどね。。。同じ旋律を演奏しても、毎回違う様に響いてしまうし、上手くいく時といかない時の差は、演奏した旋律と関係なかったりするので難しいです。演奏は自由ですが、作品が醸し出したいイメージは厳密に意識してもらいました。イメージを喚起できる演奏なら、どんな演奏でも間違いないと思っていたので。

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このプロジェクトは多くの音楽家・演奏家が参加していますが、エピソードなどがあれば教えてください。または、それぞれの曲にまつわるエピソードなどもあれば教えてください。

今回、初めてクラシックの弦楽器の方と演奏したのですが、楽譜を見ただけでその通りに演奏してしまうので吃驚しました。変な感想ですが、「プロやな。。」と素直に思いました。何か変更を説明しても、即座に合わせてくれる。逆に普段アーティストとして、自分の楽曲を発表している演奏家は、説明をしても自分なりの方法で演奏しようとするので、感覚をあわしていくのに時間が掛かりました。その分、何かを掴むと一気に演奏が突き抜けたものになって予想外の境地に行ける。最終的に目指すところも辿り着くところも同じなんですが、スタート地点が随分違いました。

音楽に限らず、ご自身の映像作品にもいえますが、高木さん特有の透明感と色彩にまつわるルーツ的なものがあれば教えてください。

自分では、あまり独特なものとは思っていないのですが。。。子供の頃から裏山に遊びに行くのが好きだったので、そういう場所からもらってるものが多いと思います。今でも、裏山に足を運ぶと、作品との共通性が裏山で見付かったりします。

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普段作品を作るにあたって、映像と音はどちらが先にイメージが来るのでしょうか?また、ご自身と音と映像の関係などを教えてください。

どちらも別々に作っているので、どちらが先という事はないです。映像を作るときは、映像を最後まで作ってしまってから、音楽を付けていきます。作っている最中の頭の中は、音が鳴っているのか鳴っていないのか分からない感じです。音楽を作っている時は、映像の事は考えませんが、あるイメージ(空気感の様なものですが)それを頼りに作るので、イメージが先行しているのかも知れません。正直なところ、自分が作った音楽に映像が必要だと思っていないし、映像に音楽が必要だともあまり思っていません。ただ、映像に音楽を付けると全く別の強さを醸し出してくれる時があるので、極力、映像に音楽を付けようと努力しますが、思い通りの音楽を付けると大抵失敗します。全く関係のない音楽を映像に合わせた時の方が、強い作品ができるのでやっかいです。

今まで行ってきた活動において、特に影響を受けた作家、作品、事柄、場所、などがあれば教えてください。

映像を作る切っ掛けになったのは、スイスの映像作家、ピピロッティ・リスト。それまで自分が知っていた映像は、映画かテレビで見るようなCM、MVくらいだったので。彼女の作品のお陰で、アートの世界で映像を自由に作っていいんだと思えました。撮影の為に、海外へ旅行に行く事が多いので、そういう場所で受ける刺激が作品作りには一番影響していると思います。

現在進行しているプロジェクトや、今後の予定など教えてください。

UAさんの新しいアルバムにピアノ演奏で参加したり、映画「そのときは彼によろしく」の音楽を一部担当しました。今は、新作映像の仕上げに掛かっています。昨年は、ライブの準備で手一杯だったので、今年は、少しゆっくり撮影旅行に出掛けて、新しい作品を作りたいと思っています。

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最後にリスナーと読者にコメントをお願いいたします。

いつもありがとうございます。好きな言葉に「無作為の作為」というのがあるんですが、そんな境地で世界を感じたいものです。最近、メインのコンピュータが壊れました。自分の相棒がいなくなったみたいで、寂しい毎日を送っています。集中できないです。思った以上にコンピュータは身近な存在でした。バックアップはお早めに。

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高木正勝「プライベート/パブリック」
発売日:2007年5月3日
収録楽曲:全16曲、約73分
価格:2,625円(税込)
発売元:Epiphany Works + BOOK
販売元:Blues Interactions, Inc.
http://www.epiphanyworks.net

Text: Yasuharu Motomiya

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