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田名網敬一

PEOPLEText: Yurie Hatano

アニメーション制作について教えてください。

ぼくのアニメーションの原点は少年時代にみたモノクロのミッキー・マウスやベティ・ブープの短編です。ブリキ製の幻灯機を使って、自分で作った紙製のフィルムを写す楽しさは、今でも時々思い出すほどです。ぼくの描くドローイングやグラフィックの仕事、その他あらゆる表現は動くということを前提に描いているし、どれも動きのある一瞬を捉えたものだと思います。「静止したものに生命を与える」アニメーションはぼくのあらゆる創作の原点です。

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特に若い世代から大きな反響を得ている、宇川直宏とのコラボレーションについて教えてください。

宇川君とはキリンプラザ大阪での展覧会、スーパーカーのジャケットやビジュアルワーク、映像の作業、ヤマハの企画したライブペインティング映像、その他沢山のコラボレーションを実現してきた。親子以上に年齢差があるぼくたち二人の共同作業は実に楽しいし、いつもスリリングで変化に富んでいる。育った時代、環境、経験など違いすぎるくらいの二人だが、ぼくにとっては、その事がとても面白い。打ちやすいボールを投げてくることはめったにないし、想定外のボールを投げてくることがほとんどだ。時には危険球だってある。超速球の見えないボールだって投げてくる。これからもますます過激で刺激的なパフォーマンスを繰り広げていきたいね。

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田名網先生にとって、家紋の魅力とは何でしょうか?

ヨーロッパの紋章と違って、日本の家紋はだれでも持つことができたんです。そんなこともあって、原型の紋を自由にアレンジしてゆくことも盛んに行われて、そのバリエーションは動物や植物、大陽、雲、雷、波、文字などないものがないぐらいバラエティーが豊富です。面白いのは、たとえば、恋人同士が一緒になるとき。当然、二人の家紋は違っていて、その二つの家紋を組み合わせて一つの家紋にしたなんていうこともあったらしいんです。ロマンチックでしょう。それに自分の家紋は分からなければ、好きな家紋を応用して自由に作ってよかった。だから、今日ある家紋というのは、どんどん変化した結果、生き残ったものなんです。それが日本の家紋の面白さなのね。家紋のデザイナーがだれか、なんて聞いたことないでしょう。そういう文献も存在してない。にもかかわらず、実は家紋の一つ一つのデザインは、現代でも通用するぐらいレベルが高い。たとえば企業のロゴも、家紋を取り込んだものが数え切れないほどある。ルイ・ヴィトンのバックについているモノグラムも日本の家紋のアレンジだからね。一種のデザインソースとしてすごいパワーを持っている。ぼく自身もデザインのヒントとしてけっこう役立ててます。今のデザイナーがこれだけのレベルで作れっていわれてもなかなかできないよね。ホント、これ以上ないくらい考え抜かれている。すごい職人技です。

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田名網敬一 × 行貝チヱ 写真:427FOTO

最後に読者にメッセージをお願いします。

ぼくのモットーは「好きなことを好きなようにやる」である。これは若い頃愛読した岡本太郎の発言や書物からの影響で、現在のぼくの生き方の大きな力になっている。この言葉の意味はとても簡単だが、内容はとても難しい。先ず、好きなことを見つけること事態が難しいし、それを仕事にし、持続することは更に難しい。そして、それを好きなようにやることは至難のわざである。才能も必要だし、人一倍の努力をしなければならない。人間関係だって重要だ。好きなように生きることほど難しいことはないのである。しかし、「好きなことを好きなようにやる」という人生が実現したとすれば、人間にとってこんな幸せはないはずである。若いみなさん、是非トライして下さい。

KAMON 田名網敬一
仕様:29.2 x 21.4 cm
アートワーク:田名網敬一
テキスト:ヤマタカEYE
発売日:2006年9月
ISBN: 4903267415
価格:2,100円(税込)
出版社:KING OF MOUNTAIN
発売:プチグラパブリッシング

Text: Yurie Hatano

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