トランスメディアーレ 2007

HAPPENINGText: Ayako Yamamoto

入り口の左側に進むと来場者はディヴィット・ロクビーの監視カメラに捕らえられ、プロジェクターで壁に映し出された画面に自分の姿を見る。

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David Rokeby

重ねてループするようになっているので、すでにそこにいない人たちもいる。隣の画面には一人一人の顔がクローズアップされ、時々選ばれた一人が「わずかにパラノイド」、「葛藤のある」、「うわのそらで」や「腹の減った」などという文字と一緒に大写しになる。繁華街などに監視カメラがあることが普通になった時代に、パブリックスペースでの人々の観察と分類の方法を批判する作品。

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Kurt d’Haeseleer “Scripted Emotions”

展望台でよくみかける双眼鏡で見えるものは? 池や植物のある中庭に向かって設置された双眼鏡に来場者が列をなしていた。カート・デ・ヘーゼェレールの「スクリプテッド・エモーションズ」。そんなに広くはない中庭を、一人一人が角度を変えじっくりと見ているので建物の向こう側に何かあるのかと思っていたら、覗いてみるとそこには夜の駐車場があった。

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Kurt d’Haeseleer “Scripted Emotions”

スクリーンがはめ込んであり、来場者は別の世界を眺めるという作品。待っている人は日の射す中庭をぼんやり見つめ、同じ方向を向いていても覗く人には街灯のともる夜の風景が見えている。

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Roman Kirschner “Roots”

その他、//////////fur////(ファー)のメンバーの一人であるロマン・キルシュナーによるペルシアのイコングラフィにインスパイアされた作品「ルーツ」(不規則なリズムのポロンポロンとした音の中、鉄の結晶が逆さにつけられた草の先っぽに付着していくというもの)など、来場者が手渡された作品紹介の紙を片手にじっくりと見ているのが印象的だった。

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Cipriam Muersan “Choose”

その中でも微笑みを誘っていたのがチプリアン・ムレシャンのビデオ作品「チョーズ」。一人の男の子がコップを真ん中にペプシ、コーラの前に座っている。一瞬の間のあとペプシをコップに注ぐ。ああペプシを選んだのかと思った瞬間、コーラも同じコップに注ぎ一息に飲むという30秒ほどの短い作品だ。ペプシとコーラで迷ったことなどないと改めて思ったというような人々の表情に男の子の愛嬌が笑顔になってプラスされていた。

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東西ドイツ統一の2年前、トランスメディアーレの前身となる第一回映像フェスティバルが開催。時代の変化とともにマルチメディア、メディアアートを取り込み成長してきたこのイベント。当時20歳が今は40歳。子連れで楽しむ姿も見られた。好奇心旺盛なベルリナーたち、そしてベルリンという街。新しい文化が生まれ、根付いていく。

TRANSMEDIALE 2007
会期:2007年1月31日〜2月4日
会場:Akademie der Künste , Hanseatenweg, Berlin
http://www.transmediale.de

Text: Ayako Yamamoto
Photos: Ayako Yamamoto

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