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ピーター・サザーランド

PEOPLEText: Garry Waller

ピーターが過去3年かけて取り組んで来た別のドキュメンタリー「ザ・マザー・プロジェクト」は、今年のトライベッカ映画祭にて世界初上映が決まり、僕がピーターにインタビューを以来した時、彼はこのイベントのプレスキットの準備に忙しくしていた。

3年に渡る撮影で、この喚起的で啓発的なドキュメンタリーは、活動的で議論を呼ぶ個性的なアート・フォトグラファー、ティアニー・ギアーロンが精神分裂病患者の母親と彼女の非常に個人的な関係を分析するという、新しい一連の作品を完成するまでを追う。ギアーロンは、当時6歳と4歳であった2人の子供、エミリーとマイケルが動物マスク以外は完全に裸でカメラに向かった写真で、イギリスにて激しい議論を呼んだ。この作品もまた、難しい状況にアクセスし、対象に対する大いなる敬意と理解をもって背後にある無視できないストーリーを捕らえるという、ピーターの能力を示す例である。


Peter Sutherland, The Mother Project, 2006

ピーターは写真作品に関して、『それはフィルム撮影の際に気にしなければならないサウンドや重たい機材について気にすることなく楽しめる、より個人的なアートフォームである。コントロールしながら能力を自由に発揮できることが、どうしてか写真を、より簡単でより楽しめるものにするんだ』と言う。

彼が選ぶ撮影の対象は、彼が常に記録しようとアイディアを得ているものであり、同時に少しずつ培われる過程におけるアイディアもあるだろう。

最新の冒険である「バック・ショッツ」というタイトルの写真集は、彼が育ったコロラドで、ダイレクトに鹿の自然の生息地やそれらを追うハンターたちに迫ったもの。『僕はいつも動物を飼うということ、犬や猫を所有するという事実を気にしてきました。鹿は、犬や猫のように飼うことができない家庭内環境に住んでいて、だから鹿が好きなんだ。』動物界に対する興味は、ピーターの作品内よく見られるテーマだ。


Peter Sutherland, Deer, 2002-2007

彼が初めてカメラで捕らえた映像には、暗い夜空の中、フラッシュに反映したガの群れがまるで星のように現れるものがある。また、友人の結婚パーティーの裏庭で撮った別の映像には、遠くからピーターのレンズを真っすぐに見つめ、一瞬固まった野生の狐が映っている。この映像は、ピーターが正しい時に正しい場所にいたことによって捕らえることができた狐と人間の “気まずい瞬間” のほんの一例だ。


Peter Sutherland, Sightings

ピーターに現在の作品や今後の予定について聞くと、いくつかのプロジェクトについて教えてくれた。彼がチャイナタウンで出会った、何十匹ものペットの猫が住むライトバンに暮らす、風変わりな男性についてのフィルムがその一つ。あまり受けないだろうことをピーターは認めているのだが、『これは不気味になるよ!』と言う。

それから取り組み中の本もある。ピーターのお気に入りのヒップホップアーティストの一人、ブルックリン在住のラッパーのポートレイトだ。ピーターはパフォーマンスを見て、コラボレーションに興味はないかと話しかけた。度々ある商業的な仕事に時間をやりくりしなればならないにもかかわらず、ピーターを自称ワーカホリックに駆り立てるのはこれらの個人的なプロジェクトである。彼の現在の時間は、フリーランスとしての仕事、ドキュメンタリーのアシスタントとしての仕事、雑誌の撮影に分けられる。にもかかわらず、彼が言うには現在の比率は70:30で、70%を個人のプロジェクトに費やし、残りの30%を商業的な仕事にあてているという。僕は即座にそれは健康的な比率ですね!と返しながら、羨ましく思わずにはいられない。

Text: Garry Waller
Translation: Yurie Hatano
Photos: Courtesy of PowerHouse Books © Peter Sutherland

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