マシュー・バーニー「拘束のドローイング 9」

THINGSText: Futakawa Yoshitaka

自然と密着した人々の生活のシーンを幾つも重ね見ながら、一つの言葉に全てが集約されていく。捕鯨船「日新丸」自身も何度も形を変えながら、4代目になるという。自然の一部として、自らを謙虚に捉えて、存在の儚さを理解することで、得ることのできる無常観「もののあわれ」が茶室の主人によって説かれる。


Matthew Barney, Drawing Restraint 9, 2005, Photo: Chris Winget, Courtesy Gladstone Gallery, New York © 2005 Matthew Barney

マシュー・バーニーは『自ら課した抵抗と創造の関係』がこの映画の核となるテーマであると語っている。

茶室とは『四畳半。作ったものは次第に壊れ、だから変化することこそ永遠。無限の高さを追求した中世のカテドラルとは対照的に、千利休は空間をどんどん狭くすることによって、人間の知覚をこえたところに無限の大きさを作り出した。』という。

そこに日本人の無常観、自然観を見付けることができる。また、同時にマシュー・バーニーを惹き付けたものを見ることができるのではないだろうか。漠然と慣れ親しんできたものを、彼の口に含んでもう一度改めて認識させられる、貴重な機会だった。

Text: Futakawa Yoshitaka
Photos: Chris Winget, Courtesy Gladstone Gallery, New York © 2005 Matthew Barney

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