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NULL* 展「×0」

HAPPENINGText: Yurie Hatano

まず、入り口から順に1〜14の数字を共にして並ぶメインのポスター作品。今回カワカミ氏は、メンバーそれぞれに数字を与え、それにゼロを掛けることで全体を「null = 0」にした。自分という「1」の存在をゼロの無限にかけたオオサワアキラの作品に始まり、14人のメンバーを集結させた+39の作品に至るまで、緻密なコンセプトと数字の連動が織りなす14のグラフィックが会場を占める。

完成されていないことのゼロ、散る様のゼロ、失うゼロ、生まれるゼロ、境界であることのゼロ、現存しないことのゼロ、虚像のゼロ。それらはメンバーの強いオリジナリティが生かされた個として成立しながら、時に次の数字への繋がりをも見せたりと、全体として一つの作品に仕上がっている。14作品を一度に眺めて楽しい。この14の作品をまとめた彼らの2作目となる作品集も、オープニングの日に発売された。

パチンコグラフィックや日本地図、桜、など、日本であるが故の素材が、ただ「日本的」とまとめられない今までにはないスタイルでこの作品にも現れていることは、実は彼らのコンセプトを意識するまで気づかなかった。それくらい視覚的なインパクトに頼らない自然でコンセプチャルな美意識であり、なじみあって、しかしよく考えると他にない。

以前のインタビューで川上氏が言うように、日本以外の土地でこれがどのように映るのかということは、とても興味深く、今後の海外展開に是非とも目を見張っていたい理由だ。

会場にはさらに、横浜「エレクトリカル・ファンタジスタ」に出展の、カメラに反応して動く2つのインタラクティブ作品が展示された。

一つは、 +39の作品「Atmosphere(decomposition)」。『カメラを経由して伝達される空間の様子を分解するインタラクションで、視覚による空間認識を変異箇所の色の抽出という形で表現した作品』と、引用したところで、この私にはそのプログラムの仕組みまでを理解することは残念ながらちっともできないのだが、つまりカメラに写る空間の範囲に起こった動きに反応し、その箇所からパラパラとドットが生まれるというもの。激しく動くほど賑やかになるスクリーンに、その最大値に挑戦しようとカメラの前に手をかざし、必至に動かしてみたり。動きの無い空間の中、誰にも気付かれないほど遠くで無意識に動いただけで、この作品だけはしっかりと反応し、思わず見つかった!という気になったり。普段認識しない行動や空間の動きを楽しげに強調する侮れないやつだ。

もう一つは、鎌田貴史(.spfdesign)の作品「Factoral Dots(ファクトラル・ドッツ)」。空間の反応に対してこちらの作品は、環境音を探知するドットがビジュアルを形成するというもの。厳密には『音を加えること(+)によって、ドットが消去され(−)、その現象自体が形を形成する(+)、「− = +」という彼らのコンセプトが具現された』作品だ。手を叩いたり、大きな声を出すと、まるでびっくりしたかのような反応をして動き、ランダムな画が浮かびあがる。まるで生き物のように時に気まぐれ。会期中のSOSO内でビートの強いBGMが流れると、リズム感よく踊りだし、空間に音と連動した小気味よい動きを加えるのだ。

展覧会が始まる前から公開となっていた、彼らによる3月のSHIFTカバーは、会期中も刻々とカウントダウンを続ける。展覧会の終着点を「0」と見立てて時をきざむことで、ここにも「×0」のコンセプトが施されており、「0」への到達で展覧会の完結を演出していた。文字を構成するドットはには、ポスター作品の一部が見られ、展覧会の予告でもあり、回想録としても繋がっていた。

解釈次第でどこまでも大きく膨らむコンセプトには、立ち止まらせ想像させる力がある。シンプルでミニマルな見た目に、奥深い中身のコネクション。向こうから一方的に語りかけてくるのでなく、こちら側からの能動的な思考、アクションが自然に引き出される。発見するほどに楽しくて、噛めば噛むほどに味が出るグラフィック、そして展覧会だった。

null* in sapporo Collection : “×0”
会期:2006年3月11日(土)〜31日(金)
時間:11:00〜21:00
会場:SOSO
住所:札幌市中央区南1西13三誠ビル1F
TEL:011-280-2240
協賛:プリンテム
https://www.nullartless.com

Text: Yurie Hatano

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