BEYES(バイズ)インタラクティブインテリア

PLACEText: Yoshihiro Kanematsu

4番目は、マルコス・ウェズカンプによる「カラー・トレース」。「ショップ環境の動きと色をマッピングして、時間と空間を脱構築する時計」というかつてないマニフェストによって生み出されたインタラクティブアートは、1秒ごとに人の動きや服の色を瞬時にトレースし、無機質なカタチと色を生成していく。一目ではわかりづらいのだけど、誰かがそこに足を踏み入れて成立する客観的事実を積み重ねることは、新しいインタラクティブマーケティングの地平?とか、壮大なアーカイブの可能性を予感させていた。


“Color Traces”, Marcos Weskamp

最後は鎌田貴史の「クロノリズム」! スペクトルのグラデーションが鮮やかな色相リングは、時を刻みながら空間のあらゆる動きに敏感に反応して回転を続ける。もしその動きをとめてみたいなら、ミリ単位の繊細な操作が要求されるだろう。同じ仕様のスクリーンセーバーをインストールできるので試した方もいるかもしれないが、マウスなら自在にできるアクションも、あなたのカラダがデバイスとなったときにものすごい神経を使う動作となる。ロジカルに組まれた厳格なプログラミングが、気まぐれにしか思えなくなってくる不思議さ。肉体感覚とロジックの錯綜が、僕たちの遊び熱に火をつけるのだ。


“Chronorhythm”, Takashi Kamata (.spfdesign)

こうしていろいろな作品に意識的に触れてきたが、垂れ流しという普段使いを考えたとき、どれもふと後から気づくような、さりげないものに仕上がっていた。「インタラクティブ」という言葉がそれほど一般的ではない今、環境に忍び込んだ空間演出は、ショッピングという気まぐれのインタラクションにどんな豊かな刺激を与えてゆくのだろう。

というわけで、今回の取材は、BEYESの黒田さんにご協力いただきました(ありがとうございます!)。『他の作品を見てまた刺激を受けたようで、その場でプログラム修正している方もいました。』とか裏話も伺いました。中でももっとも印象的だったのは、いい感じに人が入ってきたらセミトラの「Skew」、混みすぎているときは「空中庭園」など、お客様の混み具合や雰囲気でコンテンツを選んでいるということ。場の空気を変えてゆくための環境装置は、クリエーター/アーティストの多彩な表現と、置かれるショップ側のリアルな空間感覚とがシンクロすることで初めて成立するのだろう。

『みんなが楽しそうにやってくれて本当に嬉しかったです。』と嬉々とお話をする黒田さんをみていて、新しい表現のフィールドが幸せに誕生したことを、汗をかきながら確信した夜だった。

BEYES INTERACTIVE INTERIOR
時間:11:00〜21:00
会場:BEYES 表参道ヒルズ店
住所:東京都渋谷区神宮前4丁目12−10 表参道ヒルズ
https://www.beyes.jp/editwall/

Text: Yoshihiro Kanematsu
Photos: Yoshihiro Kanematsu, Kenjiro Nakano

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