ナターシャ・ロウ展「ホールド」

HAPPENINGText: Sayaka Hirakawa

ピンヒールにピンクのパンティ、それにシルバーのペイントのあるキャミソールを着た女の子が、椅子にのってランプのバルブを取り替えようとしている。それが、少し前まで、大型のブックショップやセレクトショップにまで、平積みで置かれていたカミラ・モートンの新刊「How to Walk in High Heels」のカバーイラスト。

ナターシャ・ロウの描く半裸もしくは全裸の女性たちには、つい足を止めてしまう魅力がどこかにある。そもそも、裸になる時というのは、シンプルになるということに似ている。一人であれば、それはリラックスした、プライベートなひとときであるかもしれない。

例えば、江國香織の小説の女性のように、ゆっくりと心ゆくまでお風呂につかって、その後、ペディキュアを塗り直したりするのかもしれない。きちんとくつろげるプライベートな空間を持った大人でいられること、彼女の作品の女性達は、それゆえに大胆でセクシーに見える。そしておそらくは、そういった女性達から愛されているのだとも思う。

ナイツブリッジ近くの、アートディーラー、チャーリー フィリップのギャラリー・イレブンで、ナターシャ・ロウの始めての個展が開催されている。静かな住宅街にあるこぢんまりとしたガラス張りのギャラリーでは、ならびのポストオフィスを過ぎた辺りから、もう、鮮やかなピンクのアルミニウムパネルが目に飛び込んでくる。「ホールド」と題されたその展覧会は、素直に受け止めるなら、抱きしめあい、からみ合う男女の、絶妙にクロップされたイメージで縁取られている。

誰かといるとき、裸になること、それはふたりのプライベートな空間を特別なものにする。そこに描かれる、愛撫の瞬間を切り取ったドローイングは、単にリラックスだけではなく、堪能や誘惑、目には見えない男女のいくつものかけひきを含んでいるようで、きっとあなたのプライベートなストーリーのいくつかを連想させたりもするだろう。

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