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「X-COLOR:グラフィティ・イン・ジャパン」展

HAPPENINGText: Yoshihiro Kanematsu

ESOWとCASPERのフィギュアが相撲をとり、スケートランプはZYSのアイコンで埋め尽くされ、NESMは芝刈り機で大地をキャンバスにしてしまった。その中でも一番遊んでたのはQP!冷蔵庫の中から床までお構いなしに侵食していくあのパターン。全部手書きでよく見ると表情がひとつひとつ違うそのハードコアっぷりを目撃すると、東京のあらゆる街角で目撃するこのちょっとした髭が、苛立つほど気になってしまうのだろう。

壁を介して思い思いに作りあげられたインスタレーション、そこには一筋縄じゃいかないライターが一堂に会したときに、図らずも相乗してしまった多様なスタイル・ウォーズが見え隠れする。普段使いの美術的スペースがかつてないやり方で攻撃され、不連続な驚きを生み出していく「X-COLOR」は、KRESSが『ありえない空間にあるGRAFFITIのかっこよさ』というときの、美術館でしかできなかったクリエイティビティの連鎖が確実に起こっていた気がした。

美術館周辺や駅前にはリーガルな壁がライターに開放された。グラフィティが少ない水戸の街で特に際立つ、ハンパない大きさのマスターピース。グレート・ザ・カブキ町が撮ったグラフィティの現場では、ライターと警官が仲良く語っている姿もあった。存続が危ぶまれるダイエー水戸店の壁のタグは小汚くバフされ、その向かいにはリーガル・ペイントが彩りを添えている。

水戸芸が街の中心にあって、「カフェ in 水戸」などでアートと身近になりつつあるここでは、「スナックぼったくり」みたいな突っ込みどころ満載の看板でも何でも受け入れる。医者がライターを気に入ってキャバクラをおごってあげるほどの懐の広い街並みに、それらの作品はしっとりと溶け込んでいた。

KRESSは『ストリートでリアルに書いていて、アツいやつらを選んだ。』と言った。一方で『リーガルなものなんてグラフィティじゃねーよ。』って声も確かにある。それでも、QPがラブレター代わりにボムしまくって、「空気とか人とか環境を変えるとか、動かすって意味」でボムという言葉を使うとき、武装化されたアイコンたちはリーガル/イリーガルという壁をとっくに突き破っていると思う。

グラフィティをめぐっては、まだまだ描ききれない側面が沢山ある。それでも「X-COLOR」を、「物議を醸すだけで成功だった」と片付けるのでは物足りない。むかつくほどに、あるいは気持ちいいほどに何かを突きつけるその秘めた強さは、何かを変えていけるだろうか。僕たちの表現であるグラフィティは、バンダリズムから破壊的イノベーションへ。その飛躍を僕は確信している。

(参考:STUDIO VOICE vol.360「拡張するグラフィティ」)

「X-COLOR:グラフィティ in Japan」展
会期:2005年10月1日〜12月4日
時間:9:30~18:00(月曜日休館)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
住所:茨城県水戸市五軒町1-6-8
TEL:029-227-8111
http://www.arttowermito.or.jp

Text: Yoshihiro Kanematsu
Photos: Yoshihiro Kanematsu, Kenjiro Nakano

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