NIKE 公式オンラインストア

神谷泰史「遍在する音楽」

HAPPENINGText: Shinichi Ishikawa

説明すると、床に並んでいる木板が実はスピーカーなのだ。赤と黒のコードは、ステレオの出力なのである。このスピーカーを鳴らす音は、会場および庭に設置された複数のマイクにより音を拾って、コンピューターを通して、ランダムに “現在の音” と “過去の音” を選んで流している。録音した時の時系列が、一旦分解され、会場内には、いくつかの時間の音(“現在と過去”または“過去と過去”)が同時に流れる。そのため、受け手は不思議な音空間の中に居る気分になるだろう。どこかのスピーカーより雨の降る音が聴こえてきた。現在、雨は降ってはいない。会期中のいつかの“過去の音”なのだろう。

個展会場の居た方に声をかけてみると、『普通は音楽というと、始まりがあって終わりがある。でもこれにはそれがない。いつに来てもいつ帰ってもいいのがおもしろいと思います』と感想をいただいた。

最終日19時、期間中にマイクにより録音された174時間分の音が録音されたハードディスクが取り外された。場所を本館に移して、その音を素材に使って、神谷がライブを行った。個展会場ではまったくの無作為な音から、作為が加わったライブ・パフォーマンスとなった。

音楽と時間というものを再認識し、また新しい音楽の形を考える非常に有意義な展覧会であった。マイクの数、マイクを設置する環境によって、出てくる音楽はまったく違ってくるだろう。今回は自然に囲まれた環境であった。これが、都市の喧騒では、どんな “音楽” になるだろう、と思った。

神谷泰史 個展「Ubiquitous Music」
会期:2005年11月20日〜26日
時間:13:00〜19:00
会場:ギャラリー門馬ANNEX
住所:札幌市中央区旭丘2丁目3-38
https://www.ami-label.net

Text: Shinichi Ishikawa
Photos: Shinichi Ishikawa

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE