トキオン・クリエイティビティ・ナウ・トーキョー

HAPPENINGText: Yoshihiro Kanematsu

次の「ヒロインの世界へようこそ」では、「乙女=ハードボイルド」の定式を掲げる嶽本野ばらは寝坊で不在ながら、言葉の引き出しがスリリングな辛酸なめ子、永遠の乙女山口小夜子、かわいい女の子探求者の米原康生が登場する。逐一「野ばらは今、どこどこにいる」情報が錯綜する中、ここではガーリーとも不思議ちゃんとも違う「乙女性」を、「宿命?」「アンチ・システム?」と手繰りながら少しずつ描き出していった。

終了間際に到着したほやほやの野ばらさんは宇川さんにふられて、『乙女はアナーキーですね!』と答えた。セッションを全く聞いてないにも関わらずその見事なシンクロニシティに感銘しつつ、性差から逃れられないでき上がってしまったシステムの中で、自分で解決していこうというハードボイルドな乙女の生き様は、クリエイティビティ以外の何ものでもないことが何となく理解できた。

休憩の後は「カタログ雑誌なんていらない!?」からリスタート。去年の藤原ヒロシ vs 平川武史の際どい構図も記憶に新しい東京のファッションシーンを巡るこのセッションには、おちまさと、元109のカリスマ販売員でマウジーのプロデューサー森本容子、DUNE編集長林文浩、アントワープ王立アカデミーを首席で卒業した三木勘也、各所でゲリラファッションショーをしかける石黒望と、ギャルからモードまで入り乱れたスレスレの豪華な顔ぶれ。

そして「オリジナリティとは何か?」の話題の時だった。『だから東京のクリエイティブシーンはダサいんだよ!!』茂木さんが林さんに思わずマジ切れでまくしたてる!『どうしてもっと外の人に分かるように説明しないのか!』と茂木。『言葉にならないものは仕方ない。感じる人の意識も重要だ。』と林。その様子の詳細は雑誌に譲るとしても、閉じた/開いた業界のコミュニケーションという文脈と、言語化できるもの/そうでないものという感性的な文脈がごっちゃになってどっちもどっちのような印象を持ちながら、オーディエンスが求めていたのがこういう切迫したハラハラだったならば、やはり今日一番のハイライトシーンなのだろう。

そうこうして「インスピレーションをくれるものは何?」という最後の質問となり、『卵のプルンプルンなところとホルモンのツヤ』という石黒さんの回答のおかげで、もやもや気分はすっかり晴れていた。

夕方になりテーブルの上にはアルコール、続いては24日間ぶりに日の目を浴びた飴屋法水、ショッキングな映像が物議をかもしたジョニー・ハードスタッフ、特殊漫画家根本敬の濃すぎる面々が登壇。テーマは「全身芸術家」ながら、裏テーマは「精子」。

飴屋さんの作品「パブリック・ザーメン」で宇川さんの精子に買い手がついた縁もあり、「精子に可能性を感じている」とうマジ顔から「勝負を決する時はセイシをかけるのだ!」というある相撲一家のシャレを利かせたフィクションまで、必然的に「精子」を軸にトークが展開する異空間をつくり出していることこそ、全身芸術家達のなせる離れ業なのだろう。精子話で盛り上がる休憩タイムは、とても生暖かった。

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