ロンドン・デザイン・フェスティバル 2005

HAPPENINGText: Sayaka Hirakawa

さて、こぎれいでサクセスフルなウェストを離れ、ひとくせもふたくせもあるアーティスト地区のイーストに向かってみよう。 倉庫のようなクラブのような、雑然とした3つの建物で行われているデザイナーズブロックは、先述の100%デザインが、善くも悪くもグッドデザインとして完成されているのに対して、全く荒削りで、時に一人よがりで、風変わりで、クレイジーとさえ思えるものの、カッティングエッジな若い、ほんとうに若いクリエイター達が、デザインを心から楽しんで、自らのプロダクトを心から誇りに思う様に触れることのできる展覧会だ。


Hulger, P*Phone

黒電話を思わせるレトロなデザインの受話器、のみ。どうするのかと思えば、携帯電話かして、といわれ、私の携帯にワンタッチ!で、受話器が装着されたのだった。各メーカーのエンジニアが、夜を徹して携帯の小型化、軽量化を模索する中、それを完全に皮肉るような、このナンセンスで、非効率的で、不必要なデザイン。でも、このおかしさ、この笑い、絶対に好きにならずにいられない。それがなかなか発色のいい、素敵なビタミンカラーが揃っているのだ。 ホルガーの受話器は、日本ではビームスなどで、入手可能とのこと。


Stuart Haygarth

打って変わって、ロマンチックな光の揺れる一室にやってきた。中心の電球を、色とりどりの物体が囲んで、それに光が反射して、夢のような光と影を作っている、のかと思い近付いて行くと、その物体のひとつひとつが、ボトルのキャップだったり、ダーツの羽のところだったり、注射器だったり。おおよそ、この美しい光をつくり出す要素とは思えないものが、それでもまったく完全な球体を構成しているのだ。つまらないもの、捨てられて行くような、よくあるものに意味を与えていくことが、スチュワート・ヘイガースのアートのストラテジーなのだそう。


James Tooze, Batch

最後に紹介するのは、デザイナーズブロックの優等生的な印象を受けた、ブライトン発の家具&プロダクトデザインチーム、ジェームス・トゥーズ。入り子式のようなサイズの異なる3つのデスクは、高さの低い二つにそれぞれ足一つ分の穴が空いていて、ここに足を通して合体させる。そういう気分でない時は、別々に。その際この穴には、花でも飾ってみるというのはどうだろう。

デザインというものと、がっぷりと向き合うこととなったこの一週間を通して、とても素敵に思えたのは、単にグッドルッキングであるということ以上に、私たちの生活に少しの微笑みや、少しの便利さ、驚きや、想像力をもたらしてくれる、そんなことがデザインというものの可能性に含まれているのだということ、そしてそれを目を輝かせながら、語ってくれた何人ものクリエイターに出会えたこと。

来年は、オフィシャルガイドブック片手に、ロンドンデザインフェスティバルを歩いてみることを、是非お勧めしたい。

London Design Festival 2005
会期:2005年9月15日〜30日
http://www.londondesignfestival.com

100% design 2005
会期:2005年9月22日〜25日
http://www.londondesignfestival.com

Designersblock 2005
会期:2005年9月22日〜25日
http://www.designersblock.org.uk

Text: Sayaka Hirakawa
Photos: Sayaka Hirakawa

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