ワビサビ

PEOPLEText: Yurie Hatano

2週目は、ウルトラグラフィックス山田英二氏の個展「判子有ります」。春に東京のHBギャラリーで開催されたものを、そのまま札幌で再現したものです。山田さんがデザインした判子のデザインは、単なるタイポグラフィーの遊びだけではなく、その文字の中に、その人らしさを考えて創られています。実際、僕たちも知っている人物の判子が沢山ありましたが、どれも、あぁ、あの人らしいと思えるものばかりでした。デザインされた文字をそれぞれ大きく壁にディスプレイして見せながらも、実物の判子を自由に捺すことができるというアナログなインタラクティブ加減が絶妙。さらには「判子のデザ印」を受注できたりと、見せ方がうまいなぁ、と思いましたね。普段僕たちが目にする山田さんの作品は、どちらかというとマニアックな、玄人受けするものが多いのですが、今回のはオールターゲットが純粋に楽しめる、そんな展覧会でしたね。

WABISABI
Re-design of Ainu Pattern, The Music, Exhibition

そして3週目は「ワビサビ+ウルトラグラフィックス」のコラボレーション展。テーマは「アイヌ文様のリ・デザイン」。このテーマに決めたのは、僕たち北海道の人々は、小さな頃からこの文様に慣れ親しんでいるし、そのデザインの素晴らしさにリスペクトされていたから。この完成されたデザインを、どうやって僕たちのものとして発表できるか?お互いがそれぞれに与えられたテーマに乗っ取り、会社を挙げて制作にかかりました。正直、やり足りなかったというのが感想です。時間が経つほど、もっともっといろいろなことができたなぁ、とちょっと悔しい気がしてます。でも展示作品はどれもすごく気に入っています。最後に、カフェの店長さんがパーティーの時に僕たちのために作ってくれた「ボンサイケーキ」と「クジラケーキ」が気に入りました(笑)。

ワビサビ
DO MUSIC!, AIR DO, Music Support Campaign

ワビサビとして最近は他にどのような活動がありますか?

北海道の航空会社、AIR DOのポスターを作りましたが、これは夏の恒例ロックイベントである、ライジング・サン(札幌)とサマー・ソニック(東京)に AIR DOが協賛して行われているキャンペーン広告。この仕事は広告代理店から「ワビサビで作って欲しい」との指名があり、去年から2度目の制作になります。ロックやるなら我らしかいないでしょう!!という感じで、ポスターからノベルティー、映像、音楽まで手掛けています。池袋に掲出されたB倍20連・16Mのボードは気持ちよかった!昨年のポスターはJAGDA新人賞の対象作品になっています。先に触れましたが、サビの受賞した「JAGDA新人賞」は、日本の音楽で言えばレコード大賞新人賞みたいなもの。すごい!39歳の新人って(笑)。そんなわけでサビは東京、大阪をはじめ、全国での受賞巡回展やセミナーの講師など大忙し。合間を縫って、いままで暖めていた作品を形にするべく制作活動中です!

ワビサビがデザインする際に心掛けていることは?

まず、自分たちが感動できるものを創る!ということですね。これにつきる!


Crow and Trash

ワビさんのロックバンド、フレミングスでの音楽活動について教えてください。

そもそもワビサビの初作品はフレミングスのジャケットデザインです(笑)。スタジオ一発録りのマキシシングル。もともと僕はバンドで食べていくつもりでしたから。若い(笑)。フレミングスのポスターでは、SADCの準グランプリを受賞しました。デザインか?音楽か?どっちのためのフレミングスって感じですが、世界12ヶ国で発売された混ぜこぜロックのオムニバス盤「Rawk’n’Roll Revolution」では、日本代表の3バンドとして1曲が収録されたりしています。現在ドラマーを失い休止状態。この場を借りてドラマー募集していいでしょうか?演奏したくて中毒症を引き起こしかけています。

サビさん、JAGDA新人賞おめでとうございます。率直な感想をお願いします。

ありがとうございます。受賞作品に関わった全ての人のおかげです。これからも賞に恥じない作品をつくっていきたいと思います。

ワビサビさんにとって、音楽とデザインの関係は?

これは、イコールと言えるでしょう。とくに僕(ワビ)は。小さな頃からジャケットデザインとミュージックが、世の中全ての格好いいモノを創り出していると思ってましたから。それはミュージシャンのスタイルや、ファッションも同じ。理屈なんか抜きに格好いい!!と思える感覚や空気を、僕は音楽を通して身につけたと思っています。こうやって今回のインタビューを振り返ると、なんだかロックなデザインばかりしてそうに思われそうですが、決してそうではありません。今回のワビサビ展のテーマが「ミュージック」だったから、ちょっと片寄ったコメントが多くなってしまいましたけどね。

活動の拠点である札幌のデザイン/クリエイティブシーンについて、どう思われますか?

今は場所など関係ないと言われている時代。こんな暮らしやすい所はないですし札幌は大好きです。それはおおらかさや、優しさなど、その土地から生まれるものは必ずあるし、それがここで制作するモノに間違いなく反映されている気がします。とはいえ東京には良く行きます。あのスピード感はネットでは感じ取れませんから。それを感じたくて。情報のスピードではなく、もっと人間の生きているスピードとか、時代の流れるスピード感。札幌にはそれがない。デザイン/クリエイティブシーンについてと言えば、札幌アートディレクターズクラブの存在は大きいと思う。それは「競い合う」という感覚をリアルに感じられるようになったから。日本のクリエイティブの最先端を突っ走るクリエイターが札幌に集まり、真剣に作品に向き合ってくれる。それまで僕たちは自分たちが感動できるものを創ることで満足していたのかも知れないけれど、今は間違いなく彼らと日々競い合っていると思えるのです。

今回のカバーデザインのコンセプトを教えてください。

これはワビサビの初期作品のアレンジで、もともとは毎日僕たちのモニターで鼓動し続けているスクリーンセーバーです。ドアーズの「LIGHT MY FIRE〜ハートに火をつけて」からインスピレーションを受けて作りました。僕たちのコンピューターには心臓があると思うとなんだか愛しいでしょう?たまに不整脈なんかもあって(笑)。今月一杯は、SHIFTを訪れる世界中のコンピューターで鼓動してもらえる。素晴らしい!

今後の計画や、チャレンジしていきたいことは何ですか?

構想まででき上がっているのにカタチになっていないアイディアが山ほどあるので、なんとかはやくカタチにしたいと思っています。ワビサビというユニット名やロゴマークを見ていただいての通り、僕たちは日本人として生まれた時から持っている、言葉では説明しがたい日本人ならではの感覚を信じています。ですから、その感覚を活かしたデザインワークで、世界中を渡り歩きたいと思っています。

最後に読者にメッセージをお願いします。

DON’T THINK, FEEL!(ワビ)

最後まで読んでいただいてありがとうございます。(サビ)


WABISABI
住所:札幌市中央区南3西8 大洋ビル2F
TEL:011-271-6666
wabi@deza-in.jp
http://www.deza-in.jp

Text: Yurie Hatano

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