オープン・ネイチャー展「情報として自然が開くもの」

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

また、アンジェラ・デタニコ+ラファエル・レインによる「Flatland」は、ボートから撮影したメコン川をピクセル単位で引き伸ばした映像をプロジェクションした作品。とても抽象的な映像だが、撮影時に同時録音された環境音がプロジェクションと同時に流され、居ながらにして匂い、そしてアジア特有の柔らかくとけるような暖かさまで感じるほど、川の辺にいるような錯覚を覚える。とても不思議な作品で、シンプルだが、逆にこのシンプルさが見る側の想像力や感覚を刺激する。この作品に触れ、リアリティとは、人間が持つ感覚が作りだし、とても曖昧なものなのだと気付く。


「Flatland」アンジェラ・デタニコ+ラファエル・レイン(2003)

他に、個人的にリスペクトしてやまないアーティスト、カールステン・ニコライによる二作品の一つで、スペクトラルシステムでも出展しているマルコ・ぺリハンとの対話の中で生まれたステルス戦闘機をコンセプトにした、スクリーン上に無数に存在する白い粒子が配置を様々に移動しイメージを変化させて行くオーディオ・ビジュアル作品「spray」なども単純な動きの中に意味が生成されていき、デジタル的なものと有機的なものを同時に感じた。


「spray」カールステン・ニコライ(2005)

情報と自然という、普段の生活の中では感覚的に関連付けすることが困難な事柄が、音や、映像、プログラム、オブジェクトなどに変換され目の前に現れ興奮すると共に、デジタル、アナログ、情報、自然が同時的に存在する現在の世界で、人はどの場所にいるのか考えさせられる展示であった。

参加アーティスト:アンジェラ・デタニコ+ラファエル・レイン、ダブルネガティヴス アーキテクチャー、福原志保+ゲオルク・トレメル、ノウボティック・リサーチ、カールステン・ニコライ、マルコ・ぺリハン、ラジオクオリア、サイン・ウェーブ・オーケストラ、ロバート・スミッソン、高嶺格、Tsunamii、ウーバーモルゲン、山下秀之+山下研究室 in 長岡造形大学、KOP(キングダム・オブ・パイラシー)

「オープン・ネイチャー:情報としての自然が開くもの」展
会期:2005年4月29日〜7月3日
開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合は翌日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
入場料:一般800円、大高生600円、中小生400円
TEL:0120-144199(フリーダイヤル)
https://www.ntticc.or.jp

Text: Yasuharu Motomiya
Photos: PAS Photography

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