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トモアキ・リュウ

PEOPLEText: Naoko Fukushi

外から日本を見て、思うことはありますか?

特に日本のデザイン誌やファッション誌などはロンドンでも話題になりますし、すごく刺激的な物だと思います。世界視野で見ても日本の雑誌はハイクオリティだと思いますし、ビジュアル表現が独特で西洋文化にはない素晴らしいものだと感じています。常に時代が何を必要かを察し興味深い展覧会をしたりと時代の先を読む鋭さというものを感じます。その代わり“流行”という一言で片付けられてしまうくらい物事の移り変わりが非常に早いですね。

シフト2005カレンダーコンペティションで、選出されての感想は?

とても嬉しく思います。急な知らせだったので驚いています。しかしそれと同じくらい世界中の方々から沢山の興味のあるメールを頂いたりして、面白い反応を得ることができたことに何より感激しています。もっともっと世界中の多くの人達に作品を見てもらう機会ができるように今後も励んで行きたいと思っています。

自分自身にとって、何かをつくるということは・・・

特に現状況から言えば、皆マック(パソコン)を使い、同じアプリケーションを使用し、同じ情報を見たり聞いたりして、オリジナリティーの確立というのがすごく難しくなってきていると思うのです。他人の二番煎じのような作品、何かの雑誌で見た事あるなぁと感じられるもの等は作りたく無いし、音楽や映像に関してもそうですが、今までの自分の学んできた過程と物づくりとを考える時そういう風にはならないと思いますし、その人なりのアプローチの仕方が大事なのではないかと思います。

何かをつくるということは…という考え方よりは、物作り自体が私のライフワークと言えます。スタイルの固定など自分自身を限定したく無いし、常に興味深い作品を追求していきたいです。それは目新しさだけを求めたようなものではなく物事を意味のあるものとして見せていきたいですね。自分一人じゃなく関わってくれる全ての人に感謝の気持ちは忘れずにいたいですし、常に身近にいる人達に支えてもらっているというのは忘れてはならない大事な事だと思います。

今回のカバーデザインのコンセプトを教えてください。

今回のカバーデザインは、私とニシダ・タクジの協力によって製作していきました。(気の遠くなるような作業を協力してくれた事に感謝しています!)制作過程ではパスの多いイラストレーターファイルがなかなかいうことを聞いてくれなかったので手を焼きましたが、沢山の事を学んだのも事実です。

まずインタラクティブなもの、フレームアニメーションでもそうですが、主題を逸れた中身のない技術だけを見せるようなものにはしたくありませんでした。それは “あるものを排除する” という事から入り試行錯誤しながら、違う視野からシンプルにも力強い作品が生み出せるのではないかと思い、自分なりのアプローチの仕方を考えました。

シフト(+新年)という主題に、フラッシュを使いどのようにアプローチすべきかを考え、新年を祝う花火の発想を発展させ時間的要素を加えました。それは98個のオブジェが次々消えていき、次へシフトしてゆく。それらは人であったり物であったり、その影だったりピクセルでもあり植物でもありうる様々な情報の集合体で、積み重なっては一瞬で消え積み重なっては消えるといった情報過多の現代の切なさを詠った詩のような作品なのではないかと私は考えます。

世界中で何万人といるグラフィックデザイナーの中で、過去のシフトカバーには現在第一線で活躍している有名なクリエイターが制作している“カバーデザイン”を2005年の始めから務めさせてもらえる機会を与えていただき、SHIFT及びその関係者の方々には非常に感謝しています。日本人としてこうして海外で活動できるという事、自分の眼で外の出来事を確認できるという事は、私は今素晴らしい経験をしているのだと感じています。

今後の予定やチャレンジしてみたいことを教えてください。

毎回のプロジェクト自体がチャレンジの連続です。そこからいろいろな事を学びながらデザイナーとして成長途中でもあります。特にエキサイティングな企画にはどんどんチャレンジしていきたいです。やりたい事は山程ありますが、ミュージックビデオの制作など常に映像や音楽とは深く関わって仕事をしていきたいです。

最後に読者にメッセージをお願いします。

最近では、物事というのは必然的なのかなと感じます。今まで自分の生きてきた中で学んできた経験として、シルクスクリーンや版画だったり、グラフィティーをやる為のステンシルをカットし、Tシャツやジンを制作したりなど、最終的にやってきた事が一本の線で結ばれていっている様に感じます。それは次に向かう(シフトする)為に自分自身に必要な事だったのだと改めて実感せざるをえません(遠回りしすぎているような気もしますが…)。

一つ一つの仕事のオファーにベストを尽くしてやっていくこと、苦労して初めて何かを学ぶのだと思いますし、そこから創造は生まれる。一歩一歩着実に踏み出していく事でクライアントにもビューアーにもそしてそのニーズに対しても理解してもらえるように今後も取り組みたいと思っています。作品に対するみなさんからの感想やコメントをもらえればとても嬉しいです。これからもよろしくお願いします。

長いですが私からの新年の挨拶とさせていただきます。
明けましておめでとうございます。
トモアキ・リュウ 1st Jan, 2005

Text: Naoko Fukushi

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