オーディオビジバ・フェスティバル 2004

HAPPENINGText: Roberto Bagatti

しかし、私はこのライブが記憶に残るようなものではなかったと言いたいのではない。(考えようによっては、もちろんそうとも言えるのだが。)ただ私は、もっとエクスペリメンタルな音楽を期待していたのだ。

エネルギーに溢れた素晴らしいプレイは確かに魅力的なものだった。しかもこんな良い雰囲気の会場とくれば、おそらく忘れられない一夜と呼ぶ人も多いだろう。私も何曲かの催眠的なグルーブに酔いしれて1時間以上聞いていたのだが、やはりダンスフロアを引き裂く観客たちを見ていると、ライブ自体は昔っぽさを思い出させるようなものであるのに、ダフト・パンクやトーマス・ブリンクマンの作り出すような熱狂が観客に感じられなかった。

この2組のアーティストがMOMといったいどういう関係があるのかと反論したい人もいるかもしれないが、私がこのライブで得た印象は、彼らはただ以前と同じようなレベルの興奮をもたらすことができなかったということだ。それにも関わらず、観客はかなりこのライブを楽しんでいたように思う。沢山の人々に見られる笑顔がそれを物語っていた。

さて、土曜日の夜に行われた(このフェスティバルのラインナップのベストとも言える)プラッドのライブについて語らずに、このレポートを締めくくることはできない。この2人組は、メランコリックでありながら生き生きとしたメロディーの美しい楽曲で1時間を駆け抜けた。

とてもワープらしいエレクトロニカとボブによる素晴らしいビジュアルだった。リアルタイムで生成されるぼんやりした色の形を使ったサイケデリックなトリップから、東京の地下鉄駅から巨大なタータンチェック柄のような建築物の細部が広がる画面へ、城壁を飛び越えて超スピードで移動する映像など、以前見たことのあるものもいくつかあったが、どれも素晴らしいアイディアの作品だった。ボブは多くの観客の視線を虜にしたことだろう。少なくとも私を虜にしたのは言うまでもない。

TDK Audiovisiva Festival 2004
会期:2004年9月10日〜19日
会場:Piccolo Teatro, Castello Sforzesco他
https://www.milanofilmfestival.it

Text: Roberto Bagatti
Translation: Naoko Fukushi
Photos: Roberto Bagatti, Simonetta Mennea

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