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草間彌生展「クサマトリックス」

HAPPENINGText: Naoko Fukushi

ファッションショーの後、水玉の立体が浮かぶ池に挟まれた通路を進み美術館へ向かった。その途中にはガラス張りの壁に囲まれた通路があり、そこから見える中庭にも、あの赤い立体が点在していた。ガラスにはレンズのようなものが貼付けられており、見る角度によってそのガラスの面には様々な大きさの立体が増殖する。

やっと入口に辿りつくと、5メートルほどある大きさの水玉のバルーンが目の前に現れる。それを取り囲む壁も水玉だ。それだけでものすごい迫力がある。雑誌の写真などでは良く目にしていたが、実際目の前にすると全く印象が違う。さらに奥へ進むと四方が鏡に囲まれた部屋の中に水玉模様のバルーンが浮かび、360度が赤と白の水玉ワールドに一気に飲み込まれる。そのうねる柔らかな曲線と水玉の赤い空間は、まさに胎内にいるような感覚を覚えた。

今展のタイトル「クサマトリックス」が、草間彌生の名前と、母胎や発生源を意味する “マトリックス” を合わせた造語というのをあらかじめ耳にしていたせいもあるかもしれないが、今にもそのバルーンが心臓の鼓動に合わせて動き出すような感じさえした。

その不思議な感覚と浮遊感を抱きながら、次に出会うのは真っ黒な巨大な箱。どうやら中に入るらしい。入口付近では、中から感嘆の声が聞こえてくる。一歩入るとそこは真っ暗闇で、小さな刻々と色を変える光が無数に広がっている。その小さな光以外に明かりはなく、方向感覚を失う。しかも周囲は鏡で囲まれている。光に包まれながら、私はもっと広がりを感じたくて思わずしゃがんでしまった。いつか見た、山から見上げた満天の星空を思い出した。

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